彼人あのひと)” の例文
「分かつてようございました。エ、彼人あのひとですか、たしか淡路あはぢの人だと云ひます。飯屋をして、大分儲けると云ふことです」
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
他事ほかぢやねえが、猪子で俺は思出した。以前もと師範校の先生で猪子といふ人が有つた。今日の御客様は彼人あのひととは違ふか。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼処あそこが叔父さんに一番相応ふさわしいお墓だよ、——神よ、彼人あのひとの魂に平安あれ」
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「どうする気か、彼人あのひと料簡りょうけんばかりは御母おっかさんにも分らないね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼人あのひとの顔を見るたんびに阿母おっかさん疳癪かんしゃくが起ってね。……
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)