庇護者ひごしゃ)” の例文
しかし、本能寺ほんのうじへんとどうじに、異国いこく宣教師せんきょうしたちは信長というただひとりの庇護者ひごしゃをうしなって、この南蛮寺も荒廃こうはいしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その外に、関西電車の社長浜田丈吉が本人の従兄いとこに当ってい、これが唯一ゆいいつの誇るに足る親戚でもあれば庇護者ひごしゃでもある。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
同様にして彼が封建むざんな連中の庇護者ひごしゃなり同情者なりのように見えたところで、別に不思議はないかも知れない。
だれもこんなことを言って、唯一の庇護者ひごしゃであるかおるにこの望みを取り次ごうとしないのを病女王は残念に思っていた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この「朱雀調べ」の主要な庇護者ひごしゃは、井伊兵部少輔である。兵部少輔直明は、本家掃部頭かもんのかみ直中の弟で、所領は越後国与板二万石。そのとし若年寄になっていた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
新三郎は若くて闊達で銭形平次の庇護者ひごしゃでした。
「安倍と結婚することは、安倍へとつぐことではなくて、庇護者ひごしゃになることだと確信しているよ、親も娘も、仮にもこの縁談を拒絶されようなどとは、思っていないね」
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
心細いこの山荘にいて源中納言だけを唯一の庇護者ひごしゃと信じてたよる心のある女房たちは、弁からの話を聞いて、この結婚を成立させることほどよいことはないと皆言いあわせ
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それも年下のくせに姉ぶって、庇護者ひごしゃを気取り、またいつも代弁者になった。そのころ彼はまだ喜市といっていたが、その名が汝生の口から出ない日はないくらいだった。
雨の山吹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)