大杉明神は常陸坊海尊ひたちぼうかいそんを祀るともいう。俗に天狗てんぐの荒神様。其附近に名代の魔者がいた。生縄いきなわのおてつという女侠客がそれなのだ。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ただしその話は申合もうしあわせたように源平げんぺい合戦かっせん義経よしつね弁慶べんけいの行動などの外には出なかった。それからまた常陸坊海尊ひたちぼうかいそんの仙人になったのだという人が、東北の各地には住んでいた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その十一人の大部分は名が伝わらぬが、ただ一人だけ知れているのは常陸坊海尊ひたちぼうかいそんであった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ただし昔話にある羽団扇はうちわを持った、鼻の高い、赤い顔の、あんなのではない。普通の人間で、ちゃんと両親もある、兄弟もある。武州御岳山おんたけさんで生れたんだ。代々山伏だ。俺の先祖は常陸坊海尊ひたちぼうかいそん
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)