上冊には桟敷後さじきうしろの廊下より御殿女中大勢居並びたる桟敷を見せ市川八百蔵いちかわやおぞうきり門蔵もんぞう御挨拶ごあいさつ罷出まかりいでお盃を頂戴ちょうだいする処今の世にはなき習慣ならわしなれば興いと深し。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから市川八百蔵いちかわやおぞうが伊豆の大島で見たという話が一つ、それは、水死人の着物を物干竿にかけて置いたら、その着物ののばした両袖に手首がだらりと下って
怪談 (新字新仮名) / 平山蘆江(著)