たかし)” の例文
平場ひらばの一番後ろで、たかしが左の端、中へ姉が来て、信子が右の端、後ろへ兄が座った。ちょうど幕間まくあいで、階下は七分通り詰まっていた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ちなみに弟のたかしは、私が八歳の時に疫痢えきりで死んだ。そのためであったろう。母は又、私の処に帰って来て、大きな乳を私に見せびらかすようになった。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
書生代わりにもなるだろうから従弟のたかしを置いてやってはどうかという手紙があったので、私達は歓迎して置いてやる意味の手紙を伯父へ書いたのではあったが、それにしても
秋草の顆 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
先ほどの女の子らしい声がたかしの足の下で次つぎに高く響いた。丸の内の街道を通ってゆくらしい自動自転車の爆音がきこえていた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
お祖母様と、モウ七歳になっていた私を連れて二日市に移住し、漢学の塾を開かれた一方に、母は亡弟たかしを抱いて市内柳原に住み、相変らず足袋の底と、軍隊の襯衣シャツに親しんだ。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
草や虫や雲や風景を眼の前へ据えて、ひそかに抑えて来た心を燃えさせる、——ただそのことだけが仕甲斐しがいのあることのようにたかしには思えた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)