寄居よりい)” の例文
その代りか、もしくは前からもあったか、関東などでは寄居よりいといい根小屋ねごやと言い箕輪みのわというのが、ともに城下の民のことであった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
中仙道熊谷より荒川に沿い寄居よりいを経て矢那瀬に至るの路を中仙道通りと呼び、この路と川越通りを昔時むかしは秩父へ入るの大路としたりと見ゆ。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「実は、村で噂しとるのは……兄さんには女が、でけとるちう話なんじゃ。寄居よりいの町かどこかにでも、囲うてあるような按排あんべえで……時々通うて行く姿を、見たもんがあるちう噂なんだ……」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「そりゃいいとしても、明後日あさって立つ約束になっている、秩父の交際つきあいはどうしたものだろう。行かねえなら行かねえように、寄居よりいの親分や秩父の身内へ、断り状を出さなければなるめえが……」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅間山は寄居よりい町から三沢村へえる釜伏峠の上あたりに、濃い藍色の影となって見えたであろう。其東によく見えた妙義や榛名というのは、右の方を東とすれば、妙義は鼻曲山を誤ったものであろう。
嘉陵紀行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
根小屋とよく似た地形をまた寄居よりいという。寄居も多くある地名で城のある地である。文字から推測すれば城下のことらしいが、これと根小屋といかなる差別があったかを知らぬ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)