実入みい)” の例文
旧字:實入
その年に二回の加賀様の行列によって、一年の活計を支えるほどの実入みいりを得ている者が、幾人あるか知れないということであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは太夫元がふと恐しい密謀を洩れ聞いたので、前途のある玉之助のために、実入みいりのよい興行を閉場とじてしまったのであった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
月々の実入みいりだけでは暮しが立たないから、姉の夫がいくらかづゝ面倒を見て居たけれども、大工の方も雪が降り出すと仕事が丸潰れになるから
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
もちろん、それらの賄賂わいろは、首枷くびかせらせる鍵代かぎだいなのだ。端公にしても、恐い眼にあうよりは、ふところに実入みいりのあるほうがいいのはいうまでもない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云はぬが花と実入みいりのよい大尽客だいじんきやく引掛ひつかけに、旅に出るのもありやうは、亭主の為めと夕暮の、涼風すずかぜ慕ふ夏場をかけ、湯治場たうぢば近き小田原をだはらで、宿場稼しゆくばかせぎの旅芸者、知らぬ土地故ゆゑ応頼おうらい
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
五百円の代物しろものが二割、三割になるんですから、実入みいりは悪くもないんですが、あッちこッちへ駆けまわって買い込んだ物を注文主へつれて行くと、あれは善くないから取りかえてくれろの
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
なんでも毎日五六十人ぐらいは詰めかけるといいますから、随分実入みいりがあることでしょう。祈祷料は思召おぼしめしなんですけれど、ひとりで二三歩も納める奴があるそうですから、たいしたものです
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そういうお前さんだって実入みいりの少い爺さんだろうよ。」
そんな人の与える祝儀が唯一の実入みいりで、市中で銭を与える人は、前に言う通り極めて少ないものでありましたけれども、弁信は怠らずに、それを語って歩きます。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多分その洋学で、多分の実入みいりがあると覚しく、金廻りはかなりよろしく、使いぶりも悪くない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ラッキョの味噌漬なんぞと聞くに堪えない雑言ぞうごんを吐く、道庵自身は相当の実入みいりがあるのに子分を憐まず、ためにデモ倉やプロ亀の反逆を来たしたことの卑吝慳貪ひりんけんどんを並べ、そのくせ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
比べてみると、こちらのつがいの獲物えものの方が実入みいりがありそうだ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)