如法暗夜にょほうあんや)” の例文
ことに川開きは、空の火も家々の燈も、船の灯も、バタバタと消えて、たちまちにして如法暗夜にょほうあんやの沈黙がくるからたまらなく嫌だ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのうちに松火たいまつの火も消えた。四辺あたりは真の如法暗夜にょほうあんや。そうして何んの音もない。
かつて、甲府城下の闇の破牢の晩に、この盛んなる型を見せたことがありましたが、あの時は如法暗夜にょほうあんやのうちに、必死の努力でやりました。今夜のは月明のうち、興に乗じて陶然として遊ぶのです。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、そこには別に恐ろしいものがいる訳ではなく、ただ文目あやめもわかぬ闇があるばかりであった。天井も左右の壁も、板を重ねた上に黒布が張ってあるらしく、針の先程の光もささぬ如法暗夜にょほうあんやである。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)