大臣おとゞ)” の例文
「それでも大臣おとゞは、殿がお風邪を召さぬようにと仰っしゃって、下されましたものを、………」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
 御若冠の時とは申ながら、賢者けんしやきこえある重臣の 菅公を時平大臣おとゞが一時の讒口ざんこうを信じ玉ひて其実否をもたゞし玉はず、卒尓そつじに菅公を左遷させんありしは 御一代の失徳しつとくとやいふべき。
見ればわかるだらうと考へて、うん成程と云つてゐた。所が見れば毫も其意を得ない。三四郎の記憶にはたゞ入鹿いるか大臣おとゞといふ名前が残つてゐる。三四郎はどれが入鹿いるかだらうかと考へた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
 御若冠の時とは申ながら、賢者けんしやきこえある重臣の 菅公を時平大臣おとゞが一時の讒口ざんこうを信じ玉ひて其実否をもたゞし玉はず、卒尓そつじに菅公を左遷させんありしは 御一代の失徳しつとくとやいふべき。
平中はその夜も本院の大臣おとゞもと伺候しこうして四方山よもやまの世間話のお相手をしていたが、彼の外にも五六人の公卿くげたちが侍っていて、初めのうちは御前がにぎやかだったのが、追い/\一人減り二人減りして
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「さあ、方々、———御一同はもはや御用はございますまい。そうして待っておいでになっても、恐らく大臣おとゞは急にはお出ましになるまいと存ずる。どうぞ御遠慮なく、御自由にお引き取りになって下さい」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)