大樹だいじゅ)” の例文
地の理はく聞いてまいりましたから、岐路わかれみちに迷いもせず、足元を見ては歩一歩ほいっぽ山深く入ってまいりますると、大樹だいじゅの蔭からのっそりと大熊が現われ出でました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
急ごしらえな仮屋ややぐらはいうまでもない。七院の伽藍がらんもみな懸崖造けんがいづくりなので、炎は山肌をめずり登って、ふだんとびの巣が見える枯れた大樹だいじゅッぺんにさえチロチロ赤い舌がひらめき見えた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気味悪い狐の事は、下女はじめ一家中いっかちゅうの空想から消去きえさって、よるおそく行く人の足音に、消魂しく吠え出す飼犬の声もなく、木枯の風が庭の大樹だいじゅをゆする響に、伝通院でんつういんの鐘の音はかすれて遠く聞える。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
ずうっと裏手は杉やもみなどの大樹だいじゅばかりの林で、其の中へばら/\/\と追込んだな
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)