大天狗だいてんぐ)” の例文
「金毘羅利生記」の主人公はあるいは僕の記憶に残った第一の作中人物かもしれない。それは岩裂いわさきの神という、兜巾鈴懸ときんすずかけを装った、なざしの恐ろしい大天狗だいてんぐだった。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御嶽山おやまへ出かけて行って、大天狗だいてんぐを召捕られたらどうです、あなたとはいい取組みでしょう
番頭は鼻の先へ握りこぶしを重ねて、大天狗だいてんぐをして見せた。そして、高い、快活な声で笑った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大天狗だいてんぐ小天狗のその中で、一番、熱度の高かったのは、岡鬼太郎、杉贋阿弥がんあみ土肥春曙どいしゅんしょらの劇評家で、当時、東京随一といわれた下谷二長町の市村座で、花々しく幕をあけた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
これからはつまらない欲なんか起こさないで、山の奥に戻っていって、大天狗だいてんぐに恥じない立派な行いをします。どうぞお慈悲じひに許して下さい。許してさえ下されば、何でもお望み通りにします。
天狗の鼻 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)