報恩おんがえし)” の例文
父も兄も相果て、母が病中斯様な処に這入って芸者を致すとの物語を聞き、あゝ己は不孝で、二十四歳の折家出をして、両親ふたおやに聊かも報恩おんがえしを致さんで
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや、理屈りくつを言うわけではないがね、目的を達するのを報恩おんがえしといえば、乞食こじきも同然だ。乞食が銭をもらう、それで食っていく、渠らの目的は食うのだ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世話になった叔父へも報恩おんがえしをせねばならぬ、と思う心より、寸陰を惜んでの刻苦勉強に学業の進みも著るしく、何時の試験にも一番と言ッて二番とはさがらぬ程ゆえ、得難い書生と教員も感心する。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
食っていけるからそれが方々で銭をもらった報恩おんがえしになるとはいわれまい。私は馬方こそするが、まだ乞食はしたくない。もとよりお志は受けたいのは山々だ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はおまえさんの希望のぞみというのがかないさえすれば、それでいいのだ。それが私への報恩おんがえしさ、いいじゃないか。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)