埒内らちない)” の例文
スペシアリテの埒内らちないに足を置く限りは、よし大衆的であれ、将又はたまた貴族的であれ、さらに選ぶところは無い筈である。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
二十歳代の青年期に蜃気楼しんきろうのような希望の幻影を追いながら脇目もふらずに芸能の修得に勉めて来た人々の群が、三十前後に実世界の闘技場の埒内らちないへ追い込まれ
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今日われらの売出そうとする砕氷船の如きは、もはやわれらがその技術を秘密の埒内らちないに停めて置かなければならないようなそんな特殊なものではなくなったのだ。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
父はいつも愛情をとおして道理を説き、道理の埒内らちないで愛情を表現することを忘れない。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
午後は親子三人、此度は街道を西南に坂を半上って、牧場の埒内らちないに入る。東向きの山腹、三囲みかかえ四囲よかかえもあるならの大木が、幾株も黄葉の枝を張って、其根もとに清水がいたりして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)