地均じなら)” の例文
一面の畠のまんなかに、四角に土地を地均じならしして、そこに二十軒ばかりの同じ形の家が、行儀よく並んで立っています。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
七兵衛が取合わないで、再び鍬の柄を取って地均じならしにかかると、がんりきはそれを黙って暫く見ていたが
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
淘汰とうた石車いしぐるまによってきれいに地均じならしをされた結果、単なる幕府の代官所在地となり終わったのである。
「それからトラックの跡で、墓場から青谷二郎の家までついていたという話でしたが、これはハッキリ見えませんでした。誰かが地均じならしをしたような形跡は見ました」
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この解放治療場開設のため周囲を地均じならし致しまして以来、斯様かように著しい衰弱の色を見せて参りましたのは、何かのわるい前兆と申せば申されぬ事もないようであります。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして、この地均じならし時代の階梯においてのみ、究極は離れなければならない運命のインテリゲンツィヤと労農階級も、楽しく共同の作業を進めることが出来るのである。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
つい先ごろ、裏に味噌蔵を建てたついでに家の周囲を地均じならししたばかりなので、八州屋を取り巻いて赤い粘土が畑のようにぼくぼくうねって、それが雨を吸ってほどよく粘っていた。
美談もなく、詩歌もなく、絵にもならず、音楽にもならず、文学にもならず、研究にもならず、ただローラーで蟻の行列を圧し潰すように、そこら一帯地均じならしされるだけのことです。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
大地の緩い傾斜に応ずるため末高に石を積んだ囲いの中へ、地均じならしの土を盛ったこの家の敷地は、この母家を一端にしてまだ/\広く奥深く屋敷跡らしい空地を残していましたから。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして、穴を埋め終ると、その柔かい土の上で、足を揃えて地均じならしを始めた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
震災後の吉原はまったく昔日せきじつおもかげを失って、慣例しきたりの廃止されることも多く、昔をしのぶよすがとてはなかった。公園もきれいに地均じならしをされて、吉原病院の医師や看護婦のテニス場と化してしまった。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
そして彼は幾らか肥えた、したがってぎろりとしたところが地均じならしをされて少しはだらしなくなったようだったが、おれとすれば頼もしいようにも感じたのはしかたがないさ。
陽気な客 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
油紙包を縄でからげた箱のような一品で、土をふるって大切だいじそうに芝生の上へ移し、再び鍬を取って、以前のように地均じならしをはじめていると、またも晴れた嵐が松の枝を渡る時
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
地均じならしの時水が吹きやしてね、で、ああして捌口はけぐちを拵えといたといつかも旦那が言ってやしたよ。いつもあ水が一寸くらいで、ぐるりと蔵を廻って横町から下水へ落ちてまさあ。」
地均じならしも始めている、ということであった。