喋舌しゃべり)” の例文
お歌さんは狂気きちがいのようになって乃公の耳を引張った。富子さんは評判のお喋舌しゃべりだから、明日学校へ行って何と言うか知れないそうだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三十人の会員の約三分の一は婦人ですが、その婦人達が一人残らず顔を隠して、翩翻へんぽんとして舞い、喃々なんなんとしてお喋舌しゃべりをするのです。
法悦クラブ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
事実紋也は女のお喋舌しゃべりに、かなり参ってしまったのであった。しかし紋也は思い返した。「どこまでもこの俺をなぶる気なのだな」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
王はこの申出でを委員会に附託したが、委員たちはコロンブスを夢想家として斥け、王も彼を熱狂的なお喋舌しゃべりと見たらしい。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「そんなことよりも、僕が一番しゃくに障ったのは」と来たので、また天神さまのお喋舌しゃべりかと言ってやりたかったが、さきは例の熱心な調子であった
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
その喧嘩の話は決して喋舌しゃべっちゃイケナイって云ってねあのひと、自分がオセッカイのお喋舌しゃべりのもんですから、イチ子さんにシッカリと口止めをしといてから
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その長いお喋舌しゃべりには、ずいぶんでたらめもまじっていたが、彼は止めるわけには行かなかった。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
とかく、君の悪い癖で、出場でばというと、すぐ自分を売り込みたがるが、短気、お喋舌しゃべり悪酒わるざけ、暴力好き、一つも取りはありはしない。ましてこんどの行くさきは北京ほっけい第一の城市まち
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君のような重厚ちょうこうな人間から見たら僕はいかにも軽薄なお喋舌しゃべりに違ない。しかし僕はこれでも口で云う事を実行したがっているんだ。実行しなければならないと朝晩あさばん考え続けに考えているんだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼処あそこで馬を番してるお喋舌しゃべりの男に聞いたんだ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何だか、昼狐につままれたような心持、平次はもとより、お喋舌しゃべりのガラッ八も、毒気を抜かれて黙り込んでしまいました。
本職の自分とともにお喋舌しゃべりばかりする奴らはいるが、聴き手としての気が利いていそうなものはなかった。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
一行がいよいよ湖畔を去って深い原始林へはいって行くや、今まで姿を見せなかった有尾人どもは木や草の中から醜悪の顔を覗かせて賑やかにお喋舌しゃべりをやり出した。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女というものはひよっこのように人の顔を見るとお喋舌しゃべりをしないじゃいられないと見える。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「鳥がお喋舌しゃべりをし始めたね。ここを下りたら、おいら達も、朝飯を食べようぜ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あのお喋舌しゃべりで浮気っぽくて容貌きりょう自慢で、若旦那とはまるっきりそりの合わないお万と一緒にされるが嫌で、ツイ自棄やけなことがあったかも知れないが
蔦子さんがお喋舌しゃべりだって構わないじゃないか。乃公が何も嘘を言った訳じゃあるまいし。それなら御縁談の事は決して蔦子さんに話すなと予め断って置けば、乃公だって手加減がある。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)