取付とりつけ)” の例文
が、もし復讐ふくしゅうのために専務の預金の食い込みを吹聴ふいちょうするとすると、取付けを食うのは分っていた。だが、取付とりつけを食って困るのは、銀行よりも預金者だった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
奉行も横目役も、もちろん城内なので、小者が、役宅の門をかたく閉めきって、為すがままに黙っていると、取付とりつけに殺到した町人たちは、刻々に人数を加えて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭ア打砕ぶっくだいても構わねえだ、われ恩を忘れたか、此の夏の取付とりつけに瓜畑へ這入へえって瓜イ盗んで、生埋にされる処を、うちの惣次郎が情けぶけえから助けて、く処もねえ者に羽織イ着せたり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
銀行からは取付とりつけを食う、得意は責めて来る——そう成ったら、実にミジメなものですよ。多分、あの店は、一旦閉めて、更に広田というものの名義で小さく始めることに成るでしょう。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)