冥加金みょうがきん)” の例文
もちろん盲人たちはその稼ぎから冥加金みょうがきんや印可料を「座」に納めることなので職屋敷の経済力もなかなかばかにならぬ力だった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
攘夷の冥加金みょうがきんを名として斬奪群盗きりとりぐんとうが横行している始末に、大之進つくづく考えると徳川三百年の余命よめい幾何いくばくとも思われない。
そのうち二割の二十両は冥加金みょうがきんとして奉納して来たので、実際自分のふところにはいっているのは金八十両であるが、その時代の八十両——もとより大金であるから
放し鰻 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「もう呑むことを考えていやがる、ちょうど金がなくなったからまず緑町の甲子雄を強請いたぶるんだ。あれだけ立派に道場を張っていれば、十両や二十両の冥加金みょうがきんは安いもんだぜ」
初午試合討ち (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
貴顕縉紳しんしんの邸宅へ接近することは出来なかった訳であるが、普通これらの官位を買うには当道を支配する久我右大臣家や組合の方へ多額の冥加金みょうがきんを納めなければならないので
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『百姓はちょうど油かすのようなものじゃ、絞れば絞るほど汁が出る』と、こういったような考えのもとに、我々百姓を絞り取り、また町人に対しては、やれ運上うんじょう冥加金みょうがきんのと
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見よかの問屋なるものは政府と特別の条約を結び、その冥加金みょうがきんなるものを上納し、その株式なるものを得、もって公開競争の道を絶ち、もってその専門商業の利益を壟断ろうだんしたるにあらずや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
豪奢ごうしゃ絢爛けんらんで、内輪では、領民に苛税を加えたり、富豪から冥加金みょうがきんを借り上げたり、そのやり繰り算段や、社交に賢い家来が(あれは、忠義者)と、主人に愛されている時世なのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真鍮座を設け、その冥加金みょうがきんの幾割かを、公然として着服し、味を占めては朱、人参、竜脳、明礬みょうばんというがごとき、薬品をさえ専売とし、さらに石灰、油等のごとき、日常品をさえ専売とし
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)