億劫おつくう)” の例文
道ばたに立ち停つて車を拾ふことさへ億劫おつくうになり、彼女は、うつむいたまま、すたすた歩道の一隅を歩いた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
従つて、筆を執るのも億劫おつくうで、万止むを得ないものゝ他は作といふ作もしなかつた。矢張、一張一弛、止むを得ないことではあるが、いかにもさびしい、悲しい辛い一年だつた。
野の花を (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
其所で彼は家庭に於ける思索家となツて、何時も何か思索にふけツてゐる、そして何時とは無く實際をうとんずるといふふうが出來て來て、すべての規則きそく無視むしする、何を爲すのも億劫おつくうになる、嫌になる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
修行場しゅぎょうば変更へんこうなどともうしますと、現世式げんせしきかんがえれば、随分ずいぶん億劫おつくうな、なにやらどさくさした、うるさい仕事しごとのようにおもわれましょうが、こちらの世界せかい引越ひきこしは至極しごくあっさりしたものでございます。