一天万乗いってんばんじょうの君にして、かくばかり御艱難ごかんなんをしのばせたもう……広岡さまのお話を伺いながら、わたくしは身を寸断されるようにおぼえました。
日本婦道記:尾花川 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二十インチの巨砲群、八十台にあまる重爆機隊、そういうもののねらいの前に、一天万乗いってんばんじょうの君まします帝都東京をはじめ、祖国の地を曝させてはたいへんである。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そら御輿みこしがお通りになる、頭をさげい、ああおやせましましたこと、一天万乗いってんばんじょう御君おんきみ戦塵せんじんにまみれて山また山、谷また谷、北に南におんさすらいなさる。ああおそれ多いことじゃ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
わたしは一天万乗いってんばんじょうの君でも容赦ようしゃしない使なのです。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)