“ほそどの”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
細殿75.0%
25.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
宮中で行なわせられた五壇の御修法みずほうのために帝が御謹慎をしておいでになるころ、源氏は夢のように尚侍へ近づいた。昔の弘徽殿の細殿ほそどのの小室へ中納言の君が導いたのである。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
暁がた、男は一人で庭に降り立って、ほんのりとかかったほそい月を仰ぎ仰ぎ、読経などをしながら、履音くつおとをしのばせてそぞろ歩きしていた。細殿ほそどのの前には丁子ちょうじの匂が夜気に強く漂っていた。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
其処は住居と云ふものの、手狭でもあれば住み荒してもあり、僅に雨露あめつゆしのげるだけだつた。乳母はこのほそどのへ移つた当座、いたはしい姫君の姿を見ると、涙を落さずにはゐられなかつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
蒼ざめた月を仰ぎながら、二人は目見えのときに通った、広い馬道めどうを引かれて行く。はしを三段登る。ほそどのを通る。めぐり廻ってさきの日に見た広間にはいる。そこには大勢の人が黙って並んでいる。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その間に召使ひは一人も残らず、ちりぢりに何処かへ立ち退いてしまふし、姫君の住んでゐた東のたいも或年の大風に倒れてしまつた。姫君はそれ以来乳母と一しよにさむらひほそどの住居すまひにしてゐた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)