人さまざまの苦労の話ひとさまざまのくろうのはなし
老醜と云ふ言葉があるが、自分のむかしから最もきらいな言葉の一つである。ひどく幼稚な観念的な言葉で、老人を無条件でヘコマセてくれようといふ風な底意地の悪い政治的なずるさがあつて甚だ無邪気でないところへ、何よりも馬鹿な言葉なのがいやなのである。 …