黒い蝶くろいちょう
義直は坂路をおりながらまた叔父のことを考へた。それは女と一緒にゐた時にも電車の中でも考へたことであつたが、しかしそれは、叔父が自分の帰りの遅いのを怒つて待つてゐるだらうと云ふことであつたが、あの時のはその叔父が自分の家へ来て坐つてゐるやうな …