幽霊の出る宮殿ゆうれいのでるきゅうでん
わたしはこの四五年来、少くとも一年のうちに二回以上は、全く天涯の孤独者であるかのやうな、そして深い寧ろ憂ひに閉ぢこめられたやうな姿で独り、登山袋に杖を突いて、遠方の景色にばかり見惚れてゐるかのやうな眼を挙げながら、すたすたとその山峡の村へ赴 …