拘泥 こだ)” の例文
百田もその事には拘泥こだわらずに、しをりさんも気持よく百田のためにというのではなく、自分自身のために愉しくつかっていた。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
どうして私の悪口わるくちを自分で肯定するようなこの挨拶あいさつが、それほど自然に、それほど雑作ぞうさなく、それほど拘泥こだわらずに、するすると私の咽喉のどすべり越したものだろうか。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに一々拘泥こだはるほどの重大さを認めなかつたからと見るのが至当であらう。
文章の一形式 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「何だ、あれつぱかしの物に、いつまで拘泥こだはつてゐるんだらう。」
質物 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼が近づいてはならぬものとめてゐた問題に就いて、こんなにあつさりと話しかけられること——こんなに拘泥こだはりなく取扱はれるのを聞くこと——が彼には、ひとつの新らしい喜びであり、また
遮ぎるものなく、拘泥こだわるものなく、澄み輝く空気を感じる。
透き徹る秋 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それに一々拘泥こだわるほどの重大さを認めなかったからと見るのが至当であろう。
文章の一形式 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)