“潤”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
うる44.5%
うるお32.8%
うるほ9.3%
しめ5.3%
うるおい2.8%
じゅん0.8%
うるほひ0.8%
にじ0.8%
0.4%
0.4%
うるう0.4%
うれ0.4%
しと0.4%
ふや0.4%
ウル0.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
父の眼には涙はなかつたが、声はうるんでゐてものが言へないので、私は勇気を鼓して「おう、用心なさんせ、左様なら」と言つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
生暖い街はうるおいを帯びて見えた。不安と険悪さは夜になる程ひどくなった。それを恐れないのは、マアタイにくるまった乞食だけだ。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
皮をかれた梨は、前のやうに花の形に切られたまゝ置かれてあつた。お光の眼にはなつかしさうなうるほひがまただん/\加はつて來た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私は深い心に泣き乍ら幻想のかげに弱つた身体からだを労つてゆく、しめつた霧がそこにもここにも重い層をなして私の身辺を圧へつける。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大きなうるおいのある眼で、長いまつげに包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒なひとみの奥に、自分の姿があざやかに浮かんでいる。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしこのえんじゅんの二龍にも、苦手にがてな者がないではない。それは城内の守備隊である。「そいつに出て来られたら……」と、いささかひるふうが見えなくもなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よし子は顔を画に向けた儘、尻眼しりめに三四郎を見た。大きなうるほひのあるである。三四郎はますます気の毒になつた。すると女が急に笑ひ出した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
仮繃帯かりほうたいの下から生々しい血汐ちしおにじみ出して私はいうべからざる苦痛を覚えたが、駅長の出してくれたかけいの水をグッと飲み干すとやや元気づいて来た。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
朝早くお帰りになるあなたの足結あゆいらす露原よ。私も早く起きてその露原で御一しょにすそらしましょう、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
見惚みほれぬ。——るむ笛の
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「おや、神田皆川町たから屋太兵衛倅和太郎、甲辰歳きのえたつどしうるう五月生——」
これが彼女の皮膚の明晢めいせきさに或るうれひを与へる様に思はれた。彼等は並んでベンチに腰をおろした。伊曾は強い香気をいだ。しかし何の温度も感じなかつた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
夏、夏、夏の薄暮は何時もアーク燈の光のやうに薄紫の涙に濡れしとつたやるせない寂しい微光の氛囲気を私の心の周囲まはりにかたちづくる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
昨夕ゆうべの雨が土をふやかし抜いたところへ、今朝からの馬や車や人通りで、踏み返したり蹴上けあげたりした泥のあとを、二人はいとうような軽蔑けいべつするような様子で歩いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
南家の姫の美しい膚は、益々マスマス透きとほり、ウルんだ目は、愈々イヨイヨ大きく黒々と見えた。さうして、時々声に出してジユする経のモンが、物のタトへやうもなく、さやかに人の耳に響く。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)