“慈”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
いつく64.9%
いつくし16.2%
なさ4.1%
4.1%
やさ2.7%
いつ2.7%
めぐ2.7%
いつくしみ1.4%
1.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
希望を持てないものが、どうして追憶をいつくしむことができよう。未来に今朝のような明るさを覚えたことが近頃の自分にあるだろうか。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
乃至ないしは最初の印象を、思い出として心のなかでいつくしんでいるのがほんとうかもしれぬ。改めて観察しようというのが不心得なのであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
その晩長崎の町には、踏み絵の鋳造者萩原裕佐が「特別なおなさけをもって」ひそかに斬罪ざんざいに処せられるそうだといううわさがひろまった。
賣てとかき口説くどき親子の恩愛おんあいかう暫時しばしはても無りけり漸々やう/\にしてつまお安はおつなみだ押拭おしぬぐ夫程迄それほどまでに親を思ひ傾城遊女けいせいいうぢよと成とても今の難儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お浪暁天あかつきの鐘に眼覚めて猪之と一所に寐たる床よりそつと出るも、朝風の寒いに火の無い中から起すまじ、も少しさせて置かうとのやさしき親の心なるに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
君のいう魔法使いの婆さんとは違った、風流な愛とか人道とかいつくしむとか云ってるから悉くこれ慈悲忍辱にんにくの士君子かなんぞと考えたら、飛んだ大間違いというもんだよ。
子をつれて (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
しかしまた吶喊とめた上は、大将の命令を聴くのが当然だから、わたしは往々曲筆をめぐんでやらぬことがある。
「吶喊」原序 (新字新仮名) / 魯迅(著)
(中略)清麻呂らと事を謀っている同類の存在も分っているが、天皇のマツリゴトはいつくしみをもって行うべきものだから、あわれみを加えて差許さしゆるしてやる
安吾史譚:02 道鏡童子 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
諸王、諸臣、及び天下の百姓、ことごと長老おきなは愛児を失ふがごとく、塩酢之昧あぢはひ口に在れどもめず、少幼者わかきめる父母かぞうしなふが如くて、いさつる声、行路みちに満てり、すなは耕夫たがやすものすきを止め、舂女つきめきおとせず。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)