“幻影”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
まぼろし66.3%
げんえい18.9%
イリュウジョン3.2%
イリユウジヨン2.1%
おもかげ1.1%
かげ1.1%
まばろし1.1%
イメエジ1.1%
イメッジ1.1%
イリュージョン1.1%
イリユージヨン1.1%
オモカゲ1.1%
ヴイジヨン1.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
人の形が、そうした霧のなかに薄いと、可怪あやしや、かすれて、あからさまには見えないはずの、しごいてからめたもつれ糸の、蜘蛛の幻影まぼろしが、幻影が。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、そのうったえに答えてくれるものもなければ、クロの幻影げんえいさえも見えてこない。かれはまたぼんやりと加茂の流れをみつめていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もろい、移り易いようなもの、例えば幸福なんていう幻影イリュウジョンとらわれているような……そうではないのかしら? しかし結婚してしまえば
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
あらゆるものの上にありもしない幻影イリユウジヨンを浮べてその夢に似た恋を食物くひものにして来たらう。
路傍の小草 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
草緑にして露繁き青山の練兵場、林を出でゝ野に入り、野を去つて更に田に出づるかうがい町より下渋谷の田舎道は余と透谷とが其頃しばしば散歩したる処にして当時の幻影おもかげは猶余の脳中に往来す。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
九女八は、まだ、素足すあしの引っこみの足どりの幻影かげを、庭の、雨足のなかに追いながら
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おさやんの家は酒屋でした。なつかしい、気のい遊び相手だつたおさやんを思ひますとまづ目に山のやうに高い大きい酒樽さかだるの並んだ幻影まばろしが見えます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
殊に、俳優の演技を通して感じられるものは、少くとも、これを舞台に移してそのまま舞台の幻影イメエジを組立て得るものであり、日本の「新劇」は、初めて舞台表現の貴重な模範を示されたと云つていい。
戯曲の生命と演劇美 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
詩に就いて云へば幻影イメッジも語義も感情を生発ママせしめる性質のものではないところにもつてきて感情はそれらを無益に引き摺り廻し、イメッジをも語義をも結局不分明にしてしまふ。
芸術論覚え書 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
それでも時折りはたまらなく咽喉のどが鳴るのであったが、飲めば必ず酔う……酔えばキット空色のパラソルの幻影イリュージョンを見る……ガタガタと慄え出す……という不可抗力のつながりに脅かされて
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
幻影イリユージヨンの消え失せた雰囲気ふんゐきくらい緑に
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おもはオモで髣髴である。幻影オモカゲである。幻にすら母を浮べ知らぬといふのである。此早調子でなく、考へしませる筈の歌である。
橘曙覧評伝 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
お話は口のさきでしやべる丈でも事は濟むが、先生の物語には、前提として、先生の目に映じた幻影ヴイジヨンがなくてはならない。それは實在に等しい。