“天鵞絨”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
びろうど55.7%
ビロード33.8%
ビロウド7.0%
びらうど1.0%
とうてん0.5%
びろおど0.5%
やろう0.5%
ヴェルウル0.5%
ヴェルヴェット0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
自分は茫々たる大海原の水の色のみ大西洋とは驚く程ちがつた紺色を呈し、天鵞絨びろうどのやうになめらかに輝いて居るのを認めるばかりであつた。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けばだった鶏頭の花をかき分けて、一つびとつ小粒の実を拾いとるのは、やがて天鵞絨ビロードや絨氈の厚ぼったい手ざわりを娯むのである。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
間もなく小間使は黒天鵞絨ビロウド張の小筐こばこを持って帰って来た。人々は世界的に有名な頸飾を見たいというので、子爵のそばへ寄っていった。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ステツィコ、おぬしには金飾りのついた天鵞絨びらうど表のをやるぞ、それは俺が韃靼人から首もろともに毮ぎ取つたやつだ。
白く千鳥を飛ばしたの絹縮みの脊負上しょいあげ。しやんとまった水浅葱みずあさぎおなじ模様の帯留で。雪のような天鵞絨とうてんの緒を、初霜薄き爪先つまさきかろふまえた南部表なんぶおもてまさの通った船底下駄ふなぞこげた
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤いふさある天鵞絨びろおどの帽子を
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
白小袖の上に紫縮緬の二つ重ねを着、天鵞絨やろう羽織に紫の野良帽子をいただいた風情は、さながら女のごとくなまめかしい。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
奥の壁に寄せてディヴァンふうの大きなダブルベッドがあって、天鵞絨ヴェルウルの寝台掛が屍体の重みで人間の身体の形に冷えびえと窪んでいる。窓際に丸い鏡のついた西洋臭い化粧台。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そんな往来を足駄でひろって行くと、角の土管屋の砂利の堆積の上に、黒い厚い外套を着、焦茶色の天鵞絨ヴェルヴェット帽をかぶった大平が立って待っていた。
一本の花 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)