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卑狗
夜は
更けた。彼女は椎の
梢の上に、
群った
笹葉の上に、そうして、
静な暗闇に垂れ下った
藤蔓の
隙々に、亡き
卑狗の
大兄の姿を見た。
卑弥呼は薄桃色の
染衣に身を包んで、やがて彼女の
良人となるべき
卑狗の
大兄と向い合いながら、鹿の毛皮の上で
管玉と勾玉とを
撰り
分けていた。
それに続いて、剣を抜いた
君長が、鏡を抱いた
王妃が、そうして、卑弥呼は、
管玉をかけ連ねた
瓊矛を持った
卑狗の
大兄と並んで、白い
孔雀のように進んで来た。