“たとえ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
仮令43.6%
28.0%
7.1%
比喩6.6%
譬喩4.7%
縦令3.8%
3.8%
例之0.9%
例令0.5%
俗諺0.5%
譬諭0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
仮令たとえ幾晩となく眠られない夜が続きに続いて彼の小さな魂を揺するようにしても、かたくなな捨吉は独りで耐えられるだけ耐えようとした。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うどの大木というたとえはあるが、若いころは知らず、このひとはとても味のある、ずば抜けたばかげさを持った無類の好人物だった。
居升の上書の後二十余年、太祖崩じて建文帝立ちたもうに及び、居升の言、不幸にしてしるしありて、漢の七国のたとえのあたりの事となれるぞ是非無き。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「あなたの直線というのは比喩たとえじゃありませんか。もし比喩なら、まると云っても四角と云っても、つまり同じ事になるのでしょう」
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
譬喩たとえとしては、はなはだ不似合いなたとえでしょうが、私どもは、そこに迷情を通じて、かえって、仏心の真実を味わうことができるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
予に金を貸した一人の如きは、君がそれほど勉強して失敗したら、縦令たとえ君に損を掛けられても恨はないとまで云うた。
家庭小言 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
又は変態怪奇を極めた所業しわざを平気で演じて行くたとえは、随分沢山に伝わっておりますので……いわんや若林博士のような特殊な体質と頭脳を持った人間が
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
例之たとえば箱根を去るなんぞはどうだろう。それがい。それなら断然たる処置であって、その癖温存おんそん的工夫を要する今の頭を苦めなくて済む。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然し店硝子みせがらすにうつる乃公だいこう風采ふうさいを見てあれば、例令たとえ其れが背広せびろや紋付羽織袴であろうとも、着こなしの不意気さ、薄ぎたない髯顔ひげがおの間抜け加減
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
例令たとえ遠山とおやまは雪であろうとも、武蔵野の霜や氷は厚かろうとも、落葉木らくようぼくは皆はだかで松のみどりは黄ばみ杉の緑は鳶色とびいろげて居ようとも、秩父ちちぶおろしは寒かろうとも、雲雀が鳴いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
せめて腕の半分も吾夫の気心が働いてくれたならばこうも貧乏はしまいに、技倆わざはあっても宝の持ち腐れの俗諺たとえの通り、いつその手腕うであらわれて万人の眼に止まるということの目的あてもない
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おれも随分虫持ちだが悟って見ればあの譬諭たとえの通り、とがりあうのは互いにつまらぬこと、まんざらかたき同士でもないに身勝手ばかりは我も云わぬ、つまりは和熟した決定けつじょうのところが欲しいゆえに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)