“こいつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:コイツ
語句割合
此奴88.6%
這奴2.5%
此女1.5%
此酒1.0%
此馬1.0%
此壺0.5%
女房0.5%
斯奴0.5%
此刀0.5%
此剣0.5%
此品0.5%
此奴等0.5%
此娘0.5%
此服0.5%
此虎0.5%
0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
此奴こいつは本当の悪魔ですよ、そのくせ恐ろしく頭が良いから、私も、もう少しでやられるところだった。皆さん、これを御覧なさい」
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「そうでがすよ。」と、七兵衛は首肯うなずいて、「お前様めえさまよく知っていなさるね。這奴こいつ、若旦那を釣出つりだそうと思ったって、うは行かねえ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
誰でも可い、何をするととがめりゃ、黙れとくらわす。此女こいつ取調とりしらべの筋があるで、交番まで引立ひったてる、わしは雀部じゃというてみい、何奴どいつもひょこひょこと米搗虫こめつきむしよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
唯僅かに菊正宗に雁行するものは、辛口セツクな最上の白葡萄酒の中に罕に存するのみである。されば、僕の『飲めればよし』の『飲めれば』は『此酒こいつは飲める』といふ意味の『飲めればよし』なのである。
書狼書豚 (新字旧仮名) / 辰野隆(著)
「いやになるなあ! ……あっ、おいっ、此馬こいつはもう助からんぞ」
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へえ、此壺こいつを妻恋坂へ届けせえすれア、とんでけえってめえります。また当分かくまっておもらい申してえんで」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おウ、チョビ安といったな。此壺こいつをちょっくら預かってくんねえ。あのさんぴんたちに見つからねえようにナ、おらア、ぐるッとそこらを一まわりして、すぐ受けとりに来るからな」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
女房こいつを連れ出すにも、なかなか、なんのかのと言い渋るので手拈てこずッたが、俺の夢見に二タ晩も岳廟の神があらわれて、きょうまでの魔邪まがつみは水に流し、以前の夫婦仲を誓い直せと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
固執しだすと斯奴こいつくらゐ薄気味の悪い奴も無いもんだね、不思議に斯う顔の中へ泌みついてビクリビクリと蚯蚓みみずみたいに曲りくねつて這ひ出すやうに思はれるのだ。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
此刀こいつくらわそうか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おれは戦争と結婚しているんだ。この成吉思汗ジンギスカンの恋人は、軍馬だ、弓矢だ、此剣こいつだ! 敵の血だ! 砂漠の風だあ——! あははははは。
それは、今朝法廷で下戻さげもどされたこのピストルだ。どうも此品こいつがさまざまなことを厭にはっきりと思いださせるので困る。早速これを処分しよう。武器の要るときはまた他のピストルを買えばいいんだ。
ピストルの蠱惑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
今聞けば実に呆れて物が云われねえ奴だ、お母様はゝさま誠に有り難うございまするが、あなたが親父へ義理を立てゝ、此奴等こいつを逃がして下さいましても天命はのがれられませんから
二人のうちでもフイフイっていうのは、まだ十七か八の初々ういういしい聡明りこうそうなをした、スンナリとした小娘でしたが、あっしに色目を使いはじめたのはドウヤラ此娘こいつの方が先だったらしいんです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いけねえ、いけねえ。そんな服装で這入へえれるもんか。ここへ親分とこから一枚いちめえ借りて来てやったから、此服こいつを着るがいい」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
成吉思汗ジンギスカン (その虎の頭を撫でて、大笑する)ははははは、お前たちに話したかな。おれは、此虎こいつに、太陽汗タヤンカンという名をけたよ。
江戸を一歩一歩と離れるのは、それだけ故郷に対して一歩一歩とさびしくもあるが、京へ一歩近づくほどに、こいつがよくなるのは有難え。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)