“いた”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:イタ
語句割合
20.2%
13.4%
11.5%
6.8%
6.6%
6.0%
5.9%
4.8%
3.4%
2.8%
2.7%
1.8%
1.5%
1.3%
1.1%
1.1%
0.7%
0.6%
0.5%
舞台0.5%
0.4%
0.3%
0.3%
破損0.3%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
悪戯0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
亥太0.1%
伊太0.1%
傷心0.1%
可傷0.1%
呵責0.1%
哀傷0.1%
在世0.1%
威丈0.1%
0.1%
0.1%
居立0.1%
居耐0.1%
0.1%
0.1%
悪痛0.1%
惡戲0.1%
0.1%
0.1%
拷問0.1%
0.1%
木板0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
版木0.1%
0.1%
0.1%
痛疼0.1%
0.1%
0.1%
蒲鉾0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
高座0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
副馬そえうまには、いつも、浅月あさずきを曳いて参るが、いつぞや、馬場で少し脚をいためたらしい故、他の馬に、鞍の用意をいたして置くように』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しなには與吉よきち惡戯いたづらをしたり、おつぎがいたいといつてゆびくはへてせれば與吉よきち自分じぶんくちあてるのがえるやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幸い秘境にいたる道順を描いたスケッチ地図が、一枚だけついていたので、それを説明してやると、この方は簡単に承服してしまった。
ひるがへつて歐米おうべいれば、さすがに母語ぼごくまでもこれを尊重そんてうし、英米えいべいごときはいたるところに母語ぼごりまはしてゐるのである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
灰色にしてややつめたく、透明とうめいなるところの気分である。さればまことに豚の心もちをわかるには、豚になって見るよりいたし方ない。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いたにはあまり人がりませぬで、四五にんりました。此湯このゆ昔風むかしふう柘榴口ざくろぐちではないけれども、はいるところ一寸ちよつと薄暗うすぐらくなつてります。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
『可哀さうに! 恐ろしい火山の煙りが、あの勇敢なプリニイを窒息させたんですね。』とジユウルがいたましさうに云ひました。
お咲をいたわったりしているのを見ても、浩はほんとうに、もう帰るとか帰らないとかいうことを、問題にもならなくしてしまう予感が
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
やゝ老いた顔の肉はいたく落ちて、鋭い眼の光の中に無限の悲しい影を宿しながら、じつと今打ちにかゝらうとした若者の顔をにらんだ形状かたち
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
葉子は寝床にはいってから、軽いいたみのある所をそっと平手でさすりながら、船がシヤトルの波止場はとばに着く時のありさまを想像してみた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
驢馬や趙先達は早くも中流を渡りきり岸に近づいていたが、童伊は危っかしい許生員をいたわりがちで、ついおくれなければならなかった。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
次の年の夏、韓国にあるわが子寛の重き病わづらふよし聞きていたく打歎きしが、十一月二日夜ふけて門叩くを誰かと問へば、寛の声なりけり。
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
私は心からの涙に浸された先生の死のあとにそれとは相反ないたましい死を迎えるはずであった。しかし先生の死の光景は私を興奮させた。
夏目先生の追憶 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
榛軒が事に阻げられて墓にいたらなかつたので、柏軒が代つて往つた。わたくしはさきに景珉の氏が不詳だと云つたが、此日記に谷村氏としてある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
永楽えいらく元年、帝雲南うんなん永嘉寺えいかじとどまりたもう。二年、雲南をで、重慶じゅうけいより襄陽じょうよういたり、また東して、史彬しひんの家に至りたもう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「勿体ないおいたわりです。戦いに参っては病躯、陣後に帰っては、碌々ろくろく御恩に浴すのみで、何ひとつ、御奉公らしいこともならぬこの病骨へ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御米およねはかう宗助そうすけからいたはられたときなんだか自分じぶん身體からだわることうつたへるにしのびない心持こゝろもちがした。實際じつさいまた夫程それほどくるしくもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「お前はその帶を見付けるのだ。金襴きんらんの立派な帶が、ひどくいたんでゐる。兩方の端には穴くらゐあいたかも知れない」
今世間に行われて居る批評の径路を考えて見ると、申し訣ないが、私のやった行きなり次第の分解批評が、大分煩いして居るのに思いいたって、冷汗を覚える。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
黒衣くろごをかぶり、拍子木を打ち、稽古をつけ、書抜きをかき、ここに幾年かの修業を積んだ上でなければ、いわゆる“舞台いたに乗る”劇は書けないものであると決められていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曹操は、帰京後も典韋の霊をまつり、子の典満てんまんを取りたてて、中郎に採用し、果てしなく彼の死をいたんでいた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幽靈いうれいのやうにほそしろふたかさねてまくらのもとに投出なげいだし、浴衣ゆかたむねすこしあらはにりて、めたるぢりめんのおびあげのけておびよりおちかゝるもなまめかしからでいたましのさまなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平次の調子があまりに穏やかなのと、その言葉の奥に優しくいたわる響があるので、お鶴はびっくりして顔を挙げました。お鶴の想像していた御用聞という概念とはおよそ心持の違った平次です。
⦅あれはなかなか立派な銀時計で、真鍮や赤銅あかがねの品とはどだい物が違うわい。すこし破損いたんじゃいるが、なあに、そりゃ自分で直すじゃろうて。
りやそんなに夜更よふかしするもんぢやねえ」といたはるやうなたしなめるやうな調子てうしていつてるのである。さうすると
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今にいたりて死せず、た父兄今日の累を致す、不幸の罪、何を以てかこれにくわえん。しかれども今日の事は、皇家の存亡に関わり、吾が公の栄辱にかかわる、万々ばんばん休すべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
当然気管を狭搾きょうさくし、やや長時間にわたる漸増的な窒息の結果、死にいたらしめたものであると思う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
早稲田大学は学問の独立を全うし学問の活用をいたし模範国民を造就するを以て建学の本旨と為す
早稲田大学の教旨 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
横井は実学を唱う、物にいたりて知をいたすは、彼が学問の功夫くふうなりといえども、彼の彼たる所以は、「神智霊覚湧きて泉の如き」直覚的大活眼かつがんにあるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
吾妻鏡は「偽はりて称す云〻」と記し、大日本史は「秀郷陽に之に応じ、其の営にいたりて謁を通ず」と記してゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「本当にかゝつたのは、つい此間このあひだですけれども、其前そのまへからすこづゝいていただいてゐたんです」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
所謂伊沢分家は今の主人あるじめぐむさんの世となつたのである。以下今にいたるまでの家族の婚嫁生歿を列記して以て此稿ををはらうとおもふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
焔は忽ちさかりなり、とみれば、また、かつがつうちしめて滅し去る、怪みて人に問へば、これおの/\わが家の悲しき精霊しやうりやうの今宵ふたたび冥々の途に就くをいた
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
悪戯いたづらいた機嫌きげんそこねたかたち、あまり子供こどもがはしやぎぎると、わか母様おふくろにはてあるぢや
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「坊ちゃん、お母様がお友達と仲よくこれを召し上がるようにって。………それから今日は好いお召を召していらっしゃるんですから、あんまりおいたをなさらないように大人しくお遊びなさいましよ」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
尊き兄を溺らせしかと兄弟共に慚ぢ悲みて、弟の袂を兄は絞り兄の衣裾もすそを弟は絞りて互ひにいたはり慰めけるが、彼橋をまた引き来りて洲の後面うしろなる流れに打ちかけ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「相変わらずのお悪戯いたでござりますか」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ね、諸君しよくん、それをかしていただかうではないか。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そうして、その動悸は肉体をいためつけるような苦しいものがともなっている場合がある。よその奥さんの気持ちの中に、こんな気持こころはミジンも湧いて来ないものだろうか。
恋愛の微醺 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
このやうにむごい目にあはされてゐるのです! その胸に可哀さうなこの孤兒みなしごを抱きしめて下さい! 廣い世の中に身の置きどころもなく、みんなからいためつけられてゐるのです!……お母さん
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
伏しておもふに皇帝陛下、一を得て光宅くわうたくし、三に通じて亭育ていいくしたまふ。紫宸にいまして徳は馬のつめの極まるところにかがふり、玄扈げんこいまして化は船のいたるところを照したまふ。
ここにその矢雉子の胸より通りてさかさまに射上げて、天の安の河の河原にまします天照らす大御神高木たかぎの神一五御所みもといたりき。この高木の神は、高御産巣日の神のまたみななり。
ここに伊耶那岐の大御神、いたく忿らして詔りたまはく、「然らば汝はこの國にはなとどまりそ」と詔りたまひて、すなはち神逐かむやらひにやらひたまひき二四
この時伊耶那岐の命いたく歡ばして詔りたまひしく、「吾は子を生み生みて、生みのはてに、三柱の貴子うづみこを得たり」と詔りたまひて、すなはちその御頸珠みくびたまの玉の緒ももゆらに取りゆらかして一八
それは、良い果実を収穫し、良い花を咲かせたいという考よりもむしろ、それ等の木や草やをいたわり愛する情のためからであった。房子は、今、朝顔の鉢を幾つとなく持っていた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
で、いたわってやるつもりで背中の上へ自分の手を乗せた。すると、その瞬間、彼は、ごそごそした木綿着物の下にむっちりした丸みを持った、弾力性に富んだ肉体の触感を覚えた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
これもまた眞鍮のいた
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
眞鍮しんちゆうかくなるいた
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
西は明るいが、東京の空は紺色こんいろに曇って、まだごろ/\遠雷えんらいが鳴って居る。武太ぶたさんと伊太いたさんが、胡瓜きゅうりの苗を入れた大きな塵取ごみとりをかゝえて、跣足はだしでやって来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
(良人は、辺土の北国へ、念仏をひろめ賜うために立って今朝は教化きょうげの旅の門出かどで——)と信じているので、そこに悲惨らしい影や、流人的るにんてき傷心いたみとか悶えなどは、見られないからであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……撫肩なでがたに重荷に背負って加賀笠を片手に、うなだれて行くほっそり白い頸脚えりあしも、歴然ありあり目に見えて、可傷いた々々しい。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前がそういつて剛情を張つておいでのところを見ると、うしてもあたしが彼家あすこ嫁入いつたのを根にもつて、あたしを呵責いためて泣かして、笑つてくれやうと思つておいでなのにちがひない。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
と、彼の才気や新知識を、哀傷いたむ者もあった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おもへば頼母たのもしいやうにもあり故郷こきやうかへるといふからしておやことおもはれますとうちしほるればそれ道理ことわりわたしでさへも乳母うばことすこしもわすれずいま在世いたならあまへるものを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
清逸は我れ知らず威丈いたけ高になって、そう厳命した。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
送れとは、せぬことを申すものかな。彼美酒に酔うて、ついには張郃にいためられるに至ろうも知れぬ
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
視よわれ戸の外に立ちて叩くもしわが声を聞きて戸を開く者あらば我その人のもといたらん而して我はその人とともにその人は我と偕に食せん
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
うち、山ン中にひっこんでるせいか、こないしてると、中腰で居立いたってるような気ィして、ちょっとも落着けしませんのン
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さあれ、其許そこたち母子おやこは、朝敵のとがにつらなる者とはせぬ。——安住の地を与えてやろう、これにおれ——と仰せてはくださいましたが、なんぼうにも居耐いたがとうて
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よほど前に大坂飛脚に出し候」と云ふ詩集が久しく蘭軒のもといたらなかつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
甘ったるいかるいくすぐる様な悲しみがいたずらの様に心の中にわき上って来る。うすやみの夕方そうっと誰かの名をよんで見たい様な気もする事もある。
身に悪痛いたみを感ずるような寒気が沙原に降る。怖れとおどろきにいずれの方角を撰ぶという余裕がなかった。彼は闇の中に幾たびかつまずいた。そのたびに柔かな沙地にひざまずいた。最後に、急な崖から転倒した。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あら秋子さん、どこへいらつしやるの。お惡戲いたをなすつちやいけないことよ。」
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
飛鳥あすか清原きよみはらの大宮に太八洲おほやしましらしめしし天皇の御世におよびて、潛龍元を體し、せん雷期にこたへき。夢の歌を聞きて業をがむことをおもほし、夜の水にいたりて基を承けむことを知らしたまひき。
直ちにくまいたきて相角しつひに之をころすなり、熊人をのがれんとするときも亦然すと云ふ、此回の探検中たんけんちうくまひし事なし、之れ夏間は人家ちかやまに出でてしよく
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
わかってるじゃねえか、顎化あごばけと一騎打ちに行くのだ。……口書くちがき爪印つめいんもあるものか、どうせ、拷問いためつけて突き落したのにちげえねえ。……ひとつ、じっくりと調べあげて、ぶっくらけえしてやろう。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「へええ。そうかね。なるほどそういわれるとどこかで見たような気もするが、しかし昔のものはやっぱり丈夫なんだね。ちっともいたんでいないじゃないか」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汽笛ふえなんか鳴らしたから不可いけなかったんです。……かしいだ原因はまだ判然わかりませんが、船底の銅版あかと、木板いたの境い目二尺に五尺ばかりグザグザに遣られただけなんです。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……それにしても、古い路考の色文を、うまい工合に使い廻して有頂天にさせて戸外そとへ引出し、鷲を使っていためつけようなんてのは、あまりといえば凄い思いつき。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
自分からいたずら事の手引きをしようとする、この三郎兵衛の態度に、雪之丞は堪えがたいいまわしさを覚えて、ほとんど吐き気すら感じて来るのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
女「大層いたしますね、今度の狂言は中々大入で、私が参りましたら一杯で、尤も土曜日でございましたが、ぎっしりでございましたよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
スパゲティを牛酪バタいためている最中で、こちらも火急の場合だったが、石亭先生の弱りかたがあまりひどいので、肉叉フゥルシェットを持ったまま先生のほうへ近づいて行った。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
打ちかちがたくあきらめられていた地上の法則が滅亡して、魂は今新しき天の法則の支配にはいろうとしている。試みられいためられたる魂は新生のよろこびにおどっている。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それから、膝栗毛は生れたんでげす。次にゃ、木曾道中を書きやすから、版木いたになりましたら又御覧なすッて
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お兄さんの精神のいたみはますますはげしくなるのを、悪魔はほほ笑んで見ていたのです。
恐怖の幻兵団員 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
ふせたる程の腫物しゆもつ出來ていたむこと甚だしく自由には起居たちゐも成ざればお花は又もやおどろきて以前の醫者をよびて見するに此度は醫師もかうべを傾け是は何共名付なづけ難き腫物しゆもつなり何にもせよ口を明て毒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とらうる処法にかなえば、門番は立竦たちすくみになりて痛疼いたさにたまらず、「暴徒が起った。……大……大変、これ、一大事じゃ、来てくれい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此間廿町ばかりなるも、泥水の溜まるあり、或は道路のいたむ処ありて歩行甚だ究するも、漸く二宮家に着するを得たり。然るに尊親氏は不在なり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
豪食、十二日にいたり、梵士教法に従い誦経ずきょうして雌雄猴を婚せしめたと出づるも、王夫妻の相愛または猴にあやかって子を産むようの祈願から出たのであろう。
……さかなも常ならお前に頼むんやが、今日のこツちやさかい、朝から榮吉が町へいて、鯛五枚にはも五本、蒲鉾いたと厚燒を十枚づゝ買うて來よつた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
舜瞽瞍を見てそのかたちいためるあり、孔子曰く、この時に於てや、天下あやうかりしかな、岌岌乎たりきと。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
雑誡ざっかい三十八章、学箴がくしん九首、家人箴かじんしん十五首、宗儀そうぎ九首等を読めば、希直きちょくの学をすや空言を排し、実践を尊み、体験心証して、而して聖賢の域にいたらんとするを看取すべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その姉はすなわち燕王のにして、其弟増寿ぞうじゅ京師けいしに在りて常に燕のために国情をいたせるも、輝祖独り毅然きぜんとして正しきにる。端厳の性格、敬虔けいけんの行為、良将とのみわんや、有道の君子というべきなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
〈王もしその罪なくして死地に就くをいたまばすなわち牛羊何ぞ択ばん〉といえるにてその意明らけし。
曰く、暮春ぼしゅん春服既に成り、冠者かんじゃ五、六人、童子どうじ六、七人を得て、(水の上)に沿(浴)い舞雩ぶう(の下)にいたり詠じて帰らん。夫子喟然きぜんとして嘆じて曰く、吾は点にくみせん。三子者出でて曾皙そうせきおくる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
新作嫌いのこの男が、最近「寄席」「圓朝」と二つも私の長篇小説を自由に脚色し、構成して、高座いたにかけ、内的にも奏効していることを思えば——。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)