“あちこち”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
彼方此方67.4%
彼方是方5.4%
彼処此処5.4%
彼地此地5.4%
遠近5.4%
反対3.3%
彼方此處1.1%
彼此1.1%
彼處此處1.1%
時々彼方此方1.1%
諸所1.1%
逍遥1.1%
遠方此方1.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「いつもの、氷川のやしろへ参詣に行って、その帰り道、彼方此方あちこち、駒にまかせて歩いて来たので、遅くなったのだと申しておりました」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お雪は白い寝衣ねまきのままで、冷々とした夜気に打たれながら、彼方是方あちこちと歩いていたが、夫の声を聞きつけて引返して来た。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、鏡の前へ立って、それを身体の彼処此処あちこちへつけて眺めまわした。これかそれかと定めかねてしばし躊躇した。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
人さわがせ屋センセイション・モンガアというものはあるもので、濠洲と南亜の海岸彼地此地あちこちで、空壜に這入った手紙や、遺書のようなものが六つも、浜に流れ着いたと言って届け出られた。
沈黙の水平線 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そして夜になると彼奴きゃつ等のたけしい唸り声を聞いて、遠近あちこちのさかりのついた野良犬や、狂犬どもが盛んに吠え立てるのだ。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
本来なら、こりゃお前さんがたが、客へお世辞せじに云う事だったね。誰かにていらっしゃるなぞと思わせぶりを……ちと反対あちこちだったね。言いました。ああ、肖ている、肖ているッて。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このはず、まずにくらして、くるしき一夜いちやは、一睡いつすいゆめをもむすばず翌朝よくあさむかへたが、まだんの音沙汰おとさたい、ながめるとそらにはくもひくび、やままたやま彼方此處あちこちには
さては邪見な七蔵しちぞうめ、何事したるかと彼此あちこちさがして大きなるふしの抜けたる所よりのぞけば、鬼か、悪魔か、言語同断、当世の摩利まり夫人とさえこの珠運が尊く思いし女を、取って抑えて何者の仕業ぞ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いままでそのうへについてあたゝかだつた膝頭ひざがしら冷々ひや/\とする、身體からだれはせぬかとうたがつて、彼處此處あちこちそでえりはたいてた。仕事最中しごとさいちう、こんな心持こゝろもちのしたことははじめてである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
仕樣事なさに、一日門口へ立つて見たり、中へ入つて見たりしてゐたが、蛇の目傘をさした源助さんの姿が、時々彼方此方あちこちに見えた。禿頭の忠太爺と共に、お定の家の前を通つた事もあつた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
四辺あたり寂然さびしくひそまり返り、諸所あちこち波止場はとば船渠ドックの中に繋纜ふながかりしている商船などの、マストや舷頭にともされている眠そうな青い光芒も、今は光さえ弱って見えた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その時健三は日のかぎった夕暮の空の下に、広くもない庭先を逍遥あちこちしていた。彼の歩みが書斎の縁側の前へ来た時、細君は半分朽ち懸けた枝折戸しおりどの影から急に姿を現わした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼方の岸辺にひめられている無数のとばりと、そしてたてや防材を組んだ塁や、また、遠方此方あちこちの森や民家の陰にいたるまで、およそそれの見えぬ所はないほど赤い旗の翩翻へんぽんと植え並べてある盛観に
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)