黒鯛くろだい)” の例文
肝油その他の臓器製薬の効能が医者によって認められるより何百年も前から日本人はかつおの肝を食い黒鯛くろだいきもを飲んでいたのである。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
佐伯さえき伊太知いたちとか、大伴おおともくじらおおし黒鯛くろだいなどは史上にも見える人物だし、丹念にさがせば、そんな類の名は、まだいくらでもあるだろう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炎天を、毎日海辺の川尻の黒鯛くろだい釣りやはや釣りに専念して、第一年の夏は終わったのであったが、第二年は六月のはじめから鮎釣りをやってみた。
想い出 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
黒鯛くろだいほどの大きさで、太く鮮やかな数本の竪縞たてじまを有った魚が一番多く、岩蔭のあならしい所からしきりに出没するのを見れば、此処が彼らの巣なのかも知れない。
釣りの穴場を知っている点では、浦粕じゅうでも指折りの船頭といわれ、どんな場合にも、黒鯛くろだいを釣りたいという客を鯊の寄り場へ案内する、などということはしなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕らは危怪きかいな蛸の単調を破るべく、鶏魚いさきすずき黒鯛くろだいの変化を喜こんでまた岸にのぼった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一えびす様が持っていられるようなああいう竿さおでは赤い鯛は釣りませぬものです。黒鯛くろだいならああいう竿で丁度釣れますのです。釣竿のだんになりますので、よけいなことですがちょっと申し添えます。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
黒鯛くろだい 七四・七四 二二・一四 一・七二 一・四〇
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
釣りの穴場を知っている点では、浦粕うらかすじゅうでも指折りの船頭といわれ、どんな場合にも、黒鯛くろだいを釣りたいという客を鯊の寄り場へ案内する、などということはしなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浦賀港から二三里三浦半島の突端の方へ寄つた下浦などは、黒鯛くろだい避寒ひかん地だとされてゐる。
東京湾怪物譚 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)