麒麟きりん)” の例文
腹いっぱいに空気を詰め込んだゴムの象や麒麟きりんや虎。そのひとつずつに五六人のお嬢さんが取っついて、ここでも沈めっこをしている。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この節、肉どころか、血どころか、贅沢ぜいたくな目玉などはついに賞翫しょうがんしたためしがない。鳳凰ほうおうずい麒麟きりんえらさえ、世にも稀な珍味と聞く。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
I博士が動物園をあずかっていた頃、世間に何か目出度いことがあって、その記念として、動物園では夫婦者の麒麟きりんを購うことに決めた。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
絢爛けんらんな色彩の古画の諸仏、羅漢らかん比丘びく比丘尼びくに優婆塞うばそく優婆夷うばい、象、獅子しし麒麟きりんなどが四壁の紙幅の内から、ゆたかな光の中に泳ぎ出す。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
魯の哀公あいこうが西のかた大野たいやかりして麒麟きりんた頃、子路は一時衛から魯に帰っていた。その時小邾しょうちゅの大夫・えきという者が国にそむき魯に来奔した。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この本堂の内陣の土蔵のとびらにも椿岳の麒麟きりん鳳凰ほうおうの画があったそうだが、惜しいかな、十数年前修繕の際に取毀とりこぼたれてしまった。
もし又乙は麒麟きりんの身長を理想的の身長としてゐるならば、麒麟よりも身長の短かい子爵はやはり乙の不賛成を覚悟しなければならぬ筈である。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
重たげに有史以前の思想で目方のついている犁牛ヤークを見に行ってやりたまえ。麒麟きりん鉄柵てつさくの横木の上から、やりの先につけたような頭をのぞかせている。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「五十有余。この比よりは、大方せぬならでは、手だてあるまじ。麒麟きりんも老いては土馬に劣ると申す事あり。云々。」
麒麟きりんの頭にもつのがある。蒼龍そうりゅうの頭にも角はある。凡下ぼんげの者が見るのは凶になるが、将軍のような大勇才度のある人が見るのは実に大吉夢といわねばならん。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百分の一近辺のものは猩々しょうじょう、鹿、猫など、それから下って百分の一より千分の一の間にあるのが麒麟きりん、象、羚羊かもしか、獅子、袋鼠、鷲、白鳥、きじ、鼠、蛙、鯉など
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
有若曰く、あにただに民のみならんや。麒麟きりんの走獣に於ける、鳳凰ほうおうの飛鳥に於ける、泰山たいざん丘垤きゅうてつに於ける、河海かかい行潦こうろうに於けるは類なり。聖人の民に於けるもまた類なり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
一身を物的境遇より退しりぞかせて、心的境遇に入らしむることも、これまた麒麟きりん老ゆるも駑馬どばに劣るに至らざる工夫くふう。木は根あればすなわち栄え、根やぶるればすなわち枯る。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
支那で麒麟きりんは五彩を具うなどいうもこんな事から起ったらしく、かかる異色の畜類を見てその人為に出るをさとらぬ人々は、必ず紺青色の馬も自然に存在すと信じたであろう。
鳳凰ほうおう麒麟きりん! 鳳凰と麒麟! 名優同志の芝居のようで。見事のご対談でございますなあ」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天文をうかがって吉兆をぼくし、星宿の変をみて禍福を憂喜し、竜といい、麒麟きりんといい、鳳鳥ほうちょう河図かと、幽鬼、神霊の説は、現に今日も、かの上等社会中に行われて、これを疑う者
物理学の要用 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
左のほうの老僧と小僧のいる方の壁にも壁画があって、獅子しし麒麟きりんのようなものが画いてあったがそれも隻方かたほうの眼が潰れていた。武士はますます驚いたがいて気を張って老僧を見た。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
仙台放送局の円本まるもと博士が発明したM式マイクロフォンが麒麟きりんのような聴覚をもち、逓信省ていしんしょうの青年技師利根川保とねがわたもつ君が設計したテレヴィジョン回転鏡が閻魔大王えんまだいおうのような視力を持っていたのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこには獅子や麒麟きりんの像の橋柱に夕顔いろの灯がともっています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ひようも来て飲む椰子森やしりんは、麒麟きりんが常の水かひ場。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
麒麟きりんのように清楚なエスパノ・スイザ。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
孔子こうしとき麒麟きりんづるにおな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
此の節、肉どころか、血どころか、贅沢ぜいたく目玉めだまなどはつひに賞翫しょうがんしたためしがない。鳳凰ほうおうずい麒麟きりんえらさへ、世にもまれな珍味と聞く。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
刺青しせい」と云ふのを「刺青あおざし」と読み、「麒麟きりん」の中に出て来る「亀山きざん」を「亀山かめやま」と読んだりした。それでも叔父は頗る得意で熱心に読んだ
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
風邪の季節には出嫌いで、例の麒麟きりんのようなくびをひっこめたまま、蝸牛は、つまった鼻のようにぐつぐつ煮えている。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
されば、コン吉はお尻をもたげ、麒麟きりんが池へ水を飲みに来たような姿勢をとると、公爵は、その尻を
(僕は木目もくめや珈琲茶碗の亀裂ひびに度たび神話的動物を発見していた)一角獣は麒麟きりんに違いなかった。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
麒麟きりんも老ゆれば、駑馬どばというではないか、そのむかしの豪雄とて何ほどのことがあるものか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
椰子やし橄欖かんらん、パプラ、バナナ、いちじくなどの珍らしい木々、獅子ししだの虎だの麒麟きりんだのの、見事な動物も住んでおります。妾の領地でございます。経営の手を待っております。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
麒麟きりんの歌
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
端厳たんげん麒麟きりんのごとき左少将秀吉さしょうしょうひでよし。風格、鳳凰ほうおうのような右少将家康うしょうしょういえやす。どっちも胸に大野心だいやしんをいだいて、威風いふうあたりをはらい、安土城本丸あづちじょうほんまる大廓おおくるわを右と左とにわかれていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこし離れたところで、麒麟きりん浮嚢うきぶくろで遊んでいる五六人のお嬢さんの組へ叫びかけて見る。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
のみならず彼の勧めた林檎りんごはいつか黄ばんだ皮の上へ一角獣の姿を現してゐた。(僕は木目もくめ珈琲コオヒイ茶碗の亀裂ひびに度たび神話的動物を発見してゐた。)一角獣は麒麟きりんに違ひなかつた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
玉楼金殿ぎょくろうきんでんを空想して、鳳凰ほうおうの舞うたつ宮居みやいに、牡丹ぼたんに遊ぶ麒麟きりんを見ながら、獅子王ししおうの座に朝日影さす、桜の花をふすまとして、明月めいげつの如き真珠を枕に、勿体もったいなや、御添臥おんそいぶしを夢見るかも知れぬ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「わしも麒麟きりんと呼ばれて居るよ」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一世の名探偵といわれた塙隼人はなわはやとも、老ゆれば駄馬に劣る麒麟きりんにもひとしい。——ははあ、老先生もひどく耄碌もうろくをしなされたわい、とここへ訪ねてきたのが今さら悔やまれてくる。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麒麟きりんはつまり一角獣ですね。それから鳳凰ほうおうもフェニックスと云う鳥の、……」
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
安政二年には長崎から大錦蛇を、三年の夏には駱駝らくだ麒麟きりんを持って来た。六兵衛が小屋をかけると、因果物などはばったり客足がとだえてしまうので、又の名を八丁泣かせの六兵衛ともいう。
……あらゆるとつて、「これ惠比壽ゑびすビールの、これ麒麟きりんビールの、札幌さつぽろくろビール、香竄葡萄かうざんぶだう牛久うしくだわよ。甲斐産かひさんです。」と、活東くわつとうはなつつけて、だらりとむすんだ扱帶しごきあひだからもせば
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただいまのところ、表向おもてむ大講会奉行所だいこうえぶぎょうしょまで参加さんかを申しだしてあるものはこれだけであるが、当日とうじつにいたって、かくれた麒麟きりん蛟龍こうりゅうのたぐいが、ぞくぞくとあらわれる見こみです
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麒麟きりんはつまり一角獣いつかくじうですね。それから鳳凰ほうわうもフエニツクスと云ふ鳥の、……」
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
臨淄りんし麒麟きりんがあらわれた由で、市民はおりに麒麟を入れて城門へ献上したそうです」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麒麟きりん」の冒頭の数頁はただちにこの興味を与へる好個かうこの一例となるであらう。
華歆かきん、李伏の徒は、その後ものべつ参内して麒麟きりん鳳凰ほうおう奇瑞きずいを説いたり、また
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、あの恐しい幻は、どうして私などの口の先で、御話し申す事が出来ましょう。もし出来たと致しましても、それは恐らく麒麟きりんの代りに、馬をして見せると大した違いはございますまい。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
麒麟きりんも老いれば駄馬だばとなるというが、いやはや、あの滝川の末路はよ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)