鸚鵡おうむ)” の例文
キュウカンチョウだの鸚鵡おうむだの、絵でしか見たことのないゴクラク鳥だの、見たことも聞いたこともない華麗はなやかな蝶だのが居りました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ちょっとえらいもんですなと末弘は鸚鵡おうむ返しに言って、——そう言えば、出征兵士を送るのなんかも、おッつぁんは大変な熱心さで
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
書斎のベランダに置かれた鳥籠の中で、薄桃色と青とで彩色いろどったような鸚鵡おうむが、日光を浴びながら羽ばたきをして、奇声を上げている。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
しかし「わかりません」と鸚鵡おうむ返しに言ってのければ、余計に相手の疑を増すことにもなり、それに第一無礼にあたるような気もした。
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
あの記者が鸚鵡おうむに生れなかったのは実に残念なことだよ。——そうしたらその仲間じゃあいちばん立派な鸚鵡になっていたろうがねえ。
平次は鸚鵡おうむ返しに言いました。千両箱というと、一両小判で千枚、一枚四もんめとしても四貫目、風袋ふうたいを加えると一つ五貫目は下りません。
すがる波に力あり、しかと引いて水をつかんで、池にさかさまに身を投じた。爪尖つまさきの沈むのが、かんざし鸚鵡おうむの白くはねうつが如く、月光にかすかに光つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
谷に近い森の奥では懸巣かけすしきりに鳴いています。鸚鵡おうむのように人の口真似をする鳥だとは聞いていましたが、見るのは初めてです。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
馬と見しは前足おとなしく並べたる獅子ししなり。さてこの「スフィンクス」のかしらの上には、鸚鵡おうむ止まりて、わが面を見て笑ふさまいと憎し。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
築山の草はことごとく金糸線綉墩きんしせんしゅうとんぞくばかりだから、この頃のうそさむにもしおれていない。窓の間には彫花ちょうかかごに、緑色の鸚鵡おうむが飼ってある。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかも、それが秘密の航海で、その上(トゥリローニーさん、失礼ですが)その秘密が鸚鵡おうむにまで話してあるのでは、ますます好みません。
「それではお前は世の中の衆生という者を見て居るのか」といって非常に理想的の問を起しましたから私も理想的の鸚鵡おうむ返しをやったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
早速英辞書をあけて調べていると psittaci(シッタサイ)というのは鸚鵡おうむの類をさす動物学の学名で、これにイズムがついたのは
鸚鵡のイズム (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その反対の側には六双の屏風が立てられて居るが赤い花の咲き乱れた梯梧の枝に白い鸚鵡おうむが止って居る画が描かれてあった。
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
真を模せんとして模し得ざりし古の画を模して、真を模せんとしたる古画家の志を忘れたる日本画家は鸚鵡おうむにつきて人語を学ばんとする者なり。
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「出て来い! 出て来て謝罪いたせ!」と鸚鵡おうむ返しのように叫び、「それに何んぞや鈍刀とは! 我らの刀を鈍刀とは!」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
鸚鵡おうむの一件で木村は初めてにがにがしい事情を知って、私に、それとなく、言葉少なに転宿をすすめ、私も同意して、二人で他の下宿に移りました。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
まだこのほかにも駒鳥こまどり鸚鵡おうむ目白頬白ほおじろなどを飼ったことがあり時によっていろいろな鳥を五羽も六羽も養っていたそれらの費用は大抵でなかったのである
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
四辺あたりを見ますと、一羽の鸚鵡おうむがつくねんと樹のまたうずくまって居りまする。文治は心中に、「さては鸚鵡でありしか」と我ながら可笑おかしさに耐えず
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なに、殺す意志がない⁉」検事は思わず鸚鵡おうむ返しに叫んだが、すぐに異議を唱えた。「しかし、薬量の誤測ということは、当然ないとは云えまい」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
同じく壁にかけられている目の醒めるような派手なドレス——朱塗りの鳥籠に青い鸚鵡おうむが一羽いても、決して不調和ではない、幻想的なルームである。
艶色落語講談鑑賞 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ところが東洋の哲学を咀嚼そしゃくしないで単に西洋の哲学の受け売りをして、翻訳的、紹介的に煩瑣なる羅列を試み、鸚鵡おうむ的にくり返すというような状態で
その孫の家には一羽の鸚鵡おうむを飼ってあったが、急に死んでしまったので、こどもが持ってきて孫の榻の傍でいじっていた。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「羊歯をね」私は鸚鵡おうむがえしに言った。それから私は例の白いさくに取り囲まれたヴィラを頭に浮べながら、「あの白い柵はいつ出来たの?」といた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
故マクス・ミュラー説に、鸚鵡おうむすら見るに随って雄鶏また雌鶏の声を擬し、自ら見るところの何物たるを人にしらす。
小犬と鶏と鸚鵡おうむとにつれづれを慰められる子供と奥さんとは、いつも主人の帰りを待っているのです。そうだ——
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
鸚鵡おうむが人のいうことを真似るように、こんな事をいうようでは、岡村もいよいよ駄目だなと、予は腹の中で考えながら
浜菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
また鸚鵡おうむを友として僅に心の寂寞を慰めた。ロビンソンに限らず総ての人類がそうなのだ。牢獄の暗黒界にただ一人淋しく禁錮せられた可憐児は如何どうする。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そしてついには、おそらく彼女が飼っていたに違いないねこ鸚鵡おうむほどにもマリユスのことを気にとめなかった。
それから、隅に吊るした鸚鵡おうむの籠をのぞいて餌の有無を見てから、衣服も換えずに、ベッドの上に仰向けに、両手の掌を頭の下に組合せて、ひっくりかえる。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ぶたるゝ程憎まれてこそ誓文せいもんかけて移り気ならぬ真実をと早速の鸚鵡おうむ返し、流石さすが可笑おかしくお辰笑いかけて、身を縮め声低く、この手を。離さぬが悪いか。ハイ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この一日千金の好日和を、新年……旧年……相変らず……などの、鸚鵡おうむ返しに暮すは勿体無し。今日往きし人も必ず多からん。今頃はさぞ面白く釣り挙げ居つらん。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
人より先に登って来た南日君と私とは、杖にもたれて雪の上に立ち停った。息を継ぐ間もあらせず「君、さかんだな」と南日君がいう、「壮だな」と鸚鵡おうむ返しに答える。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
いかにも、それは鸚鵡おうむのようなぎごちなさだった。いいおわるとすぐ帽子をかぶった。大人おとなものらしい鳥打帽は漫画まんがのこどものようではあったが、似合っていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そでなし外套がいとうを着込んだペンギン鳥。くちばしを木刀のように構えているペリカン。それから、鸚鵡おうむ。その一番よく仕込まれたやつでも、現在彼らの番人には遠く及ばない。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
鼻は鸚鵡おうむくちばしのような形で、顔は天然痘のために少々穴があいていて、そこに消えることのないからびた花が咲いているさまは、霜にうたれた秋の葉のようだった。
晴川せいせん歴々たり漢陽の樹、芳草萋々せいせいたり鸚鵡おうむの洲、対岸には黄鶴楼のそびえるあり、長江をへだてて晴川閣と何事か昔を語り合い、帆影点々といそがしげに江上を往来し
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
我輩も少々うれしいような心持ちがした。細君と妹は引越しの荷ごしらえで終日急がしい。七時に茶を飲むときに食堂でった。「今日は飼っていた鸚鵡おうむを売りました」
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鸚鵡おうむとくらべるとずっと声に柔かみがあって美しい。私は決して教えないのであるが、懸巣の方でひとりでに覚えるのである。一たん、覚え込んだら忘れぬものらしい。
懸巣 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「怪物の正体が確かめられないうちは、ネス湖の怪物もナンセンスだ。君は頭部が獏で、胴から下が鸚鵡おうむの動物が、銀座通りをのこのこ歩いている姿を想像できるかい」
獏鸚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なに、趙雲が変心したと?」玄徳は、鸚鵡おうむ返しに叫んだが、すぐ語気をかえて、糜芳を叱った。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麒麟という奴は何だってんな長い首をけているんだろう。彼奴あいつに洋服を着せたら、随分ハイカラになるだろうなんて思っている中に、忠公が鸚鵡おうむに手を突付かれた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
……麻川来太は曲がった角から三軒めの家を訪れた。野茨のいばらの低い生垣の門を入ると洋風の玄関があり、春の光のいっぱいにさしているその片隅に鸚鵡おうむの籠が置いてあった。
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
鸚鵡おうむのような一羽の秦吉了しんきちりょうが飛んで来ていばらの上にとまって、つばさをひろげて二人をおおった。玉は下からその足を見た。一方の足には一本の爪がなかった。玉は不思議に思った。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
この栃の木という材は、材質が真白で、木理もくめに銀光りがチラチラあって純色の肌がすこぶる美しいので、かつてこの材を用いて鸚鵡おうむを作り、宮内省の御用品になったことがある。
二人の歩哨が、鸚鵡おうむがえしにそんな意味のことを英語でいいあうと、別れて行った。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
かわいい鸚鵡おうむのように文句を諳誦して、どういう意味のものであるかは少しも気にかけなかった。するともう支離滅裂なおかしなものになってしまった。彼女はいっこう平気だった。
その虐待の張本人は公爵の弟であるらしくその名を口にする時だけは、さすがにカンテラ形な老給仕頭の顎もグッと寸が延び、鸚鵡おうむくちばしのような鼻にもフンといったような皺が走った。
良人おっとおきるのは大抵正午近くなので、鶴子は毎朝一人で牛乳に焼麺麭トーストを朝飯に代え、この年月飼馴かいならした鸚鵡おうむかごを掃除し、盆栽に水をそそぎなどした後、髪を結び直し着物をきかえて
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鳥馴しの男は、喋舌しゃべ鸚鵡おうむと、大きな鸚鵡に似た鳥とを持ち出し、一羽ずつ手にのせてそれ等に「如何ですか」とか「さよなら」とかいう言葉を、勿論日本語でだが、交互に喋舌らせた。