はせ)” の例文
鮫ヶ橋にはせ戻りて、一部始終を告げ知らせばお丹、「ふむ。」といったきり。しばらくものも謂わざりしが、やがて歎息して
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは水揚みづあがりせざるところものどもこゝにはせあつまりて、川すぢひらき水をおとさんとする也。闇夜あんやにてすがたは見えねど、をんなわらべ泣叫なきさけこゑあるひとほく或はちかく、きくもあはれのありさま也。
世を忍ぶ身を隠匿かくまいれたる志、七生忘れられず、官軍にはせさんぜんと、決心した我すら曇り声にいだせし時も、愛情の涙はまぶたあふれながら義理のことば正しく、かねての御本望わたくしめまでうれしゅう存じますと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
はせられけり又大岡越前守にはおなじく六のお太鼓を相※あひづに是も御役宅を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
和尚なだれに押落おしおとされ池に入るべきを、なだれのいきほひに手鞠てまりのごとく池をもはねこえて掘揚ほりあげたる雪に半身はんしんうづめられ、あとさけびたるこゑに庫裏くりの雪をほりゐたるしもべらはせきたり
御出入おでいりの商人、職人、盆栽のお見出しに預りたる植木屋までが、驚破すわ鎌倉とはせ参じ、玄関狭しと詰懸け詰懸け、一夜ひとよ眠らで明くる頃、門内へ引込みたる母衣懸ほろがけの人力車、彼はと見れば
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仲の兄はせかえって綆を取りしという談だにのこりぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
餘所よそに聞流すは本意ほんいならず思ひ餘程よほど刻限こくげんのびたりと申せしかど假令たとへ無陀むだになるとも屆くだけは御助力じよりよく致さんとはせ着しに幸ひ間に合ておすくひ申たるは我等の本望ほんまう先々まづ/\安堵あんど致されよと申ければ夫婦は漸々安心してホツと溜息ためいき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんぢ炎威えんゐたゝかへ、うみやまくさいし白熱はくねつして、なんぢまなこくらまんとす。て、痩躯そうくをかつて、そでかざして病魔びやうまたてせよ。隻手せきしゆはらつてれ。たゝかひはよわし。あしはふるふとも、こゝろそらはせよ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
河原に待せ其身は取て返しける時に昌次郎夫婦は出立のあと火打ひうちのこつて有る故急ぎ忘れしと見えたりとゞくれんと親の上臺は後よりたづさへはせたりしが昌次郎とは往違ゆきちがひに成たり偖又はなしかはつて此猿島河原は膝丈の水成しが一人の雲助わかき女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝろそらはせよ。しからずんば——くるしいから、繰返くりかへして
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)