青嵐せいらん)” の例文
玄蕃允は小姓をさしまねいて、愛馬“青嵐せいらん”を彼方から曳かせ、武者十名ほど具して、そこから直ちに中尾山の本陣へ向って行った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人のきめた浮き世の位、身の高下がなんであろう! 人間忠相に対する人間泰軒——思えば、青嵐せいらん一過して汗を乾かす涼しいあいだがらであった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
会者、鳴雪、碧梧桐、五城、墨水、麦人、潮音、紫人、三子、孤雁こがん燕洋えんよう、森堂、青嵐せいらん三允さんいん竹子ちくし、井村、芋村うそん坦々たんたん、耕雨。おくれて肋骨ろっこつ、黄塔、把栗来る。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
同化してその物になるのである。その物になり済ました時に、我を樹立すべき余地は茫々ぼうぼうたる大地をきわめても見出みいだし得ぬ。自在じざい泥団でいだん放下ほうげして、破笠裏はりつり無限むげん青嵐せいらんる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時、玄関でまたおとなう声がしましたのを、今度は、はっきりと聞きとって、青嵐せいらん
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
次いで、最早や安蘇山群の青嵐せいらんが家々の軒に吹き寄せている佐野の町にも行きました。綿織めんおりものの糸を撚るという小川の水車の数。蝋燭ろうそくを点して出流山いずるさんの観音堂の洞にもお詣りします。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
浴客はまだ何処にも輻湊ふくそうしていなかったし、途々みちみち見える貸別荘の門なども大方はしまっていて、松が六月の陽炎ようえん蒼々あおあおと繁り、道ぞいの流れの向うに裾をひいている山には濃い青嵐せいらんけぶってみえた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
向うを見ると、雪の間、青嵐せいらん秋錦しゅうきんの間、小さな燭が晃々こうこうとかがやいて、今しも、酒宴の終ったところか、鉤のの廻廊を退がって来る侍の影が点々とお錠口へ流れてくる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくぞ来し今青嵐せいらんにつゝまれて
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
玄蕃允は、陣幕を払って、外へ出て、南の方二里余、青嵐せいらんまゆにせまる賤ヶ嶽を見た。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嘲吏青嵐せいらん
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)