銀杏いちやう)” の例文
けれども月日は私の元氣に後楯うしろだてをした。診察室の前の大鏡に映る、ひつつめ銀杏いちやうの青白い顏は、日に日に幾らかづつ色を直して行つた。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
一つ一つ灯がつく、いろどられた銀杏いちやうの淋しさに鳥は鳴いてゆくのであつた。彼女はその時初めて心のなかにうつした男の戀しさを考へたのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
それは生国魂いくたま神社の境内の、さんがんでゐるといはれてこはくて近寄れなかつたくすの老木であつたり、北向八幡の境内の蓮池にはまつた時に濡れた着物を干した銀杏いちやうの木であつたり
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)