距離みちのり)” の例文
実際、あれだけの長い距離みちのりの間に、二人の人間がお互の存在に意識を持ち合つたのは、谷川へ降りた時あの時一度だけではなかつたのか。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
二本の赤い鉄柱の距離みちのりを目分量で測って見ると、一町には足りないくらいだが、いくら眼と鼻の間だからと云って、一方だけを専門にしてさえ覚束おぼつかない彼の監視力に対して
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一つ二つ短かい距離みちのりを行く間に「あみださま」に関した話をして聞かせた。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかし距離みちのりは遠いらしい。かすかにかすかに聞こえるのである。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
近い停車場へも十数里の距離みちのりがあつて、東京の客なぞ登山の季節にも滅多に来ない。単調で奇も変もない山国の風趣が気にいつて、私は暫く泊ることにした。
山の貴婦人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
思へばあれは、長い距離みちのりの丁度中頃に当る辺りであつたに違ひない、何か目印でもあるのであらう、龍然は突然谷川の曲点カアブを指し示してあそこで休もうではないかと言ひ出した。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)