かた)” の例文
出づれば、その道まさり、その伴ふ星またまさる、しかしてその己がさがに從ひて世の蝋をとゝのかたすこといよ/\いちじるし 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かの狩衣などを紫黒色に染めこれをエビ染め、またその色をエビ色というのはこれらブドウの実の熟した色にかたどったものである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
小説が詩のやうに何々でありましたとか何々であつたとかリイムをあはせて行進するものでないとしたら事実は各々独特な外延をかたどつて
忠君の血をそそぎ愛国の血を流したる旅順には凶変をかたどる烏の群れが骸骨の山をめぐって飛ぶ。田吾作も八公も肉体の執着を離れて愛国の士になった。
霊的本能主義 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
と云うのは、いかなる魔の所業しわざであろうか、戸板の上の骸骨には、あし首がくくり合わされていて、それが人魚をかたどる、あの図紋のように感じられたからである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
塵埃ごみだらけの土産物店の硝子ガラス箱、その中の銅製花瓶、象形文字の敷物、ダマスカス鉄の小武器、すふぃんくす形の卓灯スタンド、金箔塗りの装飾網、埃及柱オベリスクかたどった鉛筆
くすんだ青銅で三人の美の女神をかたどり、しゃれた真珠貝の火除ひよけをつけた、非常に優美な燭台がテーブルの上へ出されたが、それと並べて、脚がびっこで、一方へ傾き
原生林をかたどった深い木立が、四阿あずまやの三方から迫って、一方はローンの緩いカーブに開けて居りますが、林も藪も非常に厚く、人間の忍び寄る隙間などはとてもありません。
死の予告 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そうした濃厚な恋愛をかたどるなまめかしい歌舞伎姿かぶきすがたを、ちらりと胸に描いた彼女は、それと全く縁の遠い、ひとの着古した外套がいとうを貰うために、今自分の前に坐っている小林を見て微笑した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は俯伏うつぶして水を眺めた。そこには見る影もない私の顔が澄んだ秋の水鏡に映っている。欄干のところに落ちていた小石をそのまま足で水に落すと、波紋はすぐに私のかたを消してしもうた。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
此書院に古画幅を掛たり。広一尺一二寸たけ三尺許装潢もふるし。一人物きんを頂ききうたり。舟に坐して柳下に釣る。欵なし。筆迹松花堂様の少く重きもの也。寺僧浦島子うらしまがこかたなりといふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その男と彼女との仲のこまやかな関係がはっきりかたそなえて眼に見えて来た。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
まる/\とした月をかたどるを作って、大勢の若い男女が、白い地をみ、黒い影を落して、歌いつおどりつ夜を深して、かたぶく月に一人ひとり二人ふたり寝に行き、到頭とうとう「四五人に月落ちかゝる踊かな」のおもむき
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
神達にはかたしか見えないから、あなたは見えない。6290
紙に宿した心のかたはいつまで呼吸してゆくやら計りがたい。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
異形いぎやうかたこそ照らせ、花のななつ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
夜の鶴をわたしはかたどる
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
あゝいと聖なる威力ちからよ、汝我をたすけ、我をしてわが腦裏にされたる祝福めぐみの國のうすれしかたあらはさしめなば 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
だから今でも巴里の市章は、この市の起原をかたどった船の模様であることも、イル・デ・ラ・シテはよく巴里の眼と呼ばれ、ノウトル・ダムは屡々しばしばその瞳と形容されることも
しかも、その二人が、里虹の子であるという証拠は、あの、人魚の尾鰭をかたどった図紋なんだよ。実はあれが、竜鋤の形ドラーヘン・シュパーテンで、トラケーネン血種という、高貴な馬に捺す烙印だったのだ。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
真中まんなか袂時計たもとどけいほどな丸い肉が、ふちとすれすれの高さにり残されて、これを蜘蛛くもかたどる。中央から四方に向って、八本の足が彎曲わんきょくして走ると見れば、先にはおのおの鴝鵒眼くよくがんかかえている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
楽しかりし日のくさ/″\のかたを汝達はもたらせり。
うらに知らるるごふかた
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
揚羽蝶をかたどる
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
我を印のかたとなして、贏利虚妄えいりきよまうの特典にし、われをして屡〻かつ恥ぢかつおこらしむることも亦然り 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
生きてはいずに、動いている性命のかた
あたかも印の形をとゞめてこれを變へざる蝋のごとく、わが腦は今汝のせしかたをうく 七九—八一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ダンテ對岸のムテルダとともに流れに溯りてすゝみ、寺院の勝利をかたどれる一のしき行列を見る
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こゝにはかたあやもみえず、岸も路もなめらかにみえて薄黒き石の色のみあらはる 七—九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)