忠直卿は、母君との絶えて久しき対面をよろこばれたが、改易かいえきの沙汰を思いのほかにたやすく聞き入れられ、六十七万石の封城を、弊履のごとく捨てられ、配所たる豊後国府内ぶんごのくにふないに赴かれた。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)