譫言うはごと)” の例文
その後間もなくシャクは妙な譫言うはごとをいふやうになつた。何が此の男にのり移つて奇怪な言葉を吐かせるのか、初め近處の人々には判らなかつた。
狐憑 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
床にせつて熱にうなされる間も、主人の機嫌を損じはしまいかと、それが譫言うはごとにまで出る程絶えずおそれられた。三日目の朝、呼び出しの速達が來た。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
夕方時々熱がでたり軽い咳嗽せきをしたり、夜寝てから譫言うはごとを言つたりする。それがとても凄いんださうです。
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
病中の譫言うはごとに「もう大阪から舟が着いた筈ぢや、早う見て来い。」と、絶えず云つてゐたさうである。
月を見ながら (新字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
その代りお前の名前を譫言うはごとに言つて居るあの娘は、この御殿と一緒に木葉微塵こつぱみぢんくだけ散るよ。好い氣味だ、——あれはお前の情人いろだらう。知らなくつてさ、——お、もう口火は燃えきつた。