諸有あらゆる)” の例文
貫通車の三等室、東京以北の諸有あらゆる国々の訛を語る人々を、ぎつしりと詰めた中に、二人は相並んで、布袋の様な腹をした忠太と向合つてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
不図渠は、諸有あらゆる生徒の目が、諄々くどくどと何やら話し続けてゐる校長を見てゐるのでなく、渠自身に注がれてゐるのに気が付いた。いつもの事ながら、何となき満足が渠のこころを唆かした。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
以て自由と光栄の平和を作成する者に有之これあり、申す迄もなく之は、諸有あらゆる創造的事業と等しく、く国民の理想を体達して、一路信念の動く所、個人の権威、心霊の命令を神の如く尊重し
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かつて、人性に第一我(物我、肉我)と第二我(神我、霊我、本来我)あるの論を立して、霊肉の抱合もしくは分離争鬩さうげきより来る人生の諸有あらゆる奇蹟を解釈し、一日姉崎博士と会して之を問ふ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
抑々そもそも人類の「愛」は、万有の生命は同一なりてふ根本思想の直覚的意識にして、全能なる神威のもつとも円満なる表現とも申す可く、人生の諸有あらゆる経緯の根底に於て終始永劫普遍の心的基礎に有之候これありさうらへば
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)