蟋蟀きり/″\す)” の例文
これ引摺ひきずつて、あしながらなさけなさうなかほをする、蟋蟀きり/″\す𢪸がれたあしくちくはへてくのをるやう、もあてられたものではない。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
廣い門の下には、この男のほかに誰もゐない。唯、所々丹塗にぬりの剥げた、大きな圓柱まるばしらに、蟋蟀きり/″\すが一匹とまつてゐる。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
風呂に入り乍ら蟋蟀きり/″\すを聴くなんて、成程なるほど寺らしい趣味だと思つたねえ。今迄の下宿とは全然まるで様子が違ふ——まあ僕は自分のうちへでも帰つたやうな心地こゝろもちがしたよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蟋蟀きり/″\す促織こほろぎか定かならず。多年東京にて聞馴れしこほろぎとは其の鳴き方少しく異るところあり。
荷風戦後日歴 第一 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
丹塗にぬりの柱にとまつてゐた蟋蟀きり/″\すも、もうどこかへ行つてしまつた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)