螳螂かまきり)” の例文
手足をバタバタ動かしながらも、立ち上がることの出来ない五郎蔵の姿が、負傷した螳螂かまきりかのように、その底に沈んで見えていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
電灯の明りに照らされてその緑色の裾模様すそもようえてうずくようだった。ふと外の闇から明りを求めて飛込んで来た大きな螳螂かまきりが、部屋の中を飛び廻って、その着物の裾のところに来てとまった。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
お秋さんはそれを見て「ふぐり見た樣ですね」といつた。自分は意外であつた。お秋さんは眞面目である。能く聞いて見たらふぐりといつたのはとんびのふぐりといふことで螳螂かまきりの卵のことだ相である。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
螳螂かまきりの軍に加わるきりぎりすのようなものでござる」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)