かひこ)” の例文
旧字:
我が越後にも化石渓あり、魚沼郡うをぬまこほり小出こいでざい羽川はかはといふたに水へかひこくさりたるをながししが一夜にして石にくわしたりと友人いうじん葵亭翁きていをうがかたられき。
その白いほつそりとした指先が、中の灯の明りを受けて、どうかすると、上簇じやうぞく中のかひこのやうにほの紅く桜色に透き通つて見えた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
其頃重右衛門は湯田中に深くはまつて居る女があつたとかで、家の衰へて行くのにも頓着せず、米を売つた代価とか、かひこを売つた金とかありさへすれば
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
のみならず一家の老若も、次男の仕事には同情がなかつた。山気やまぎに富んだ三男は、米相場やかひこに没頭してゐた。三男の妻は次男の病に、女らしい嫌悪を感じてゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
京都は三ぽう山に囲まれてゐるので、夏になると雷が多い。空がごろごろ鳴り出すと、京都の女はチヨコレエトを食べさして、かひこのやうにぶるぶるつと身体からだふるはせる。
あるひは時に断ゆれども、又ぎ、又続ぎて、彼等の物語はかひこの糸を吐きてまざらんやうに、限も知らず長くわたりぬ。げにこの積る話を聞きも聞せもせんが為に、彼等はここに来つるにやあらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かひこのやうに一人の子を大切にし
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
我が越後にも化石渓あり、魚沼郡うをぬまこほり小出こいでざい羽川はかはといふたに水へかひこくさりたるをながししが一夜にして石にくわしたりと友人いうじん葵亭翁きていをうがかたられき。
これらの事につき熟思つら/\おもふに、きぬおるにはかひこいとゆゑ阳熱やうねつこのみぬのを織にはあさの糸ゆゑ阴冷いんれいこのむ。さてきぬは寒に用ひてあたゝかならしめ、布はしよに用てひやゝかならしむ。
深山幽僻しんざんいうへきの地なればかひこはもとより木綿わたをもしやうぜざるゆゑ、衣類いるゐとぼしき事おしてしるべし。