荒唐こうとう)” の例文
かくかんがえて見ると、後世全く無意味荒唐こうとうと思われる玩具にも、深き歴史的背景と人間生活の真味が宿っている事を知るべきである。
土俗玩具の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
そしてあの荒唐こうとうな奇怪な心の adventure をかえってまざまざとした現実の出来事でもあるかのように思いなして
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
どこまでも、荒唐こうとうの美をほしいままにして、当時江戸前の意気な舞台に対抗させようというのであった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
上世じょうせいの歴史を見るに、たいてい荒唐こうとう疑うべきもの多し。しかれども数千年ののちにありて、またこれを如何いかんともすべからざるなり。西洋太古の伝説もまた、往々おうおう疑うべきものあり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
そこに作者の現わそうとするのは、現実の深い生に触れて得られた Vision ではなく、疲れた心を襲う荒唐こうとうな悪夢の影である。そこには人間的なものは現われていない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
涙香るいこう小史のほんあん小説に「怪美人」というのがあるが、見物して見るとあれではない、もっともっと荒唐こうとうけいで、奇怪至極しごくの筋だった。でもどっか、涙香小史を思わせる所がないでもない。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)