後で思えば、その頃から彼の老病はかなりあつかったのであろう。その夜を最後に、雪斎はふたたび土を踏まなかった。臨済寺中秋寂寞りんざいじちゅうしゅうじゃくまく、ひとりの高僧はひそと死んだ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)