紫蘇しそ)” の例文
そこは昔のさむらいの屋敷跡のように思えた。畑とも庭ともつかない地面には、梅の老木があったり南瓜かぼちゃが植えてあったり紫蘇しそがあったりした。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
第十四 紫蘇しそ飯 と申すのは勢州せいしゅう岩内いわうちの名物ですが大層味の良いもので先ず青紫蘇を塩水で洗って日に干してパリパリに乾かしておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
青い朴葉の香氣かをりも今だに私の鼻の先にあるやうな氣がします。お牧は又、紫蘇しその葉の漬けたのをたけのこの皮に入れて呉れました。
梅干のはいった大きいお握りで、とろろ昆布でくるむか、紫蘇しその粉をふりかけるかしてあった。浅草海苔あさくさのりをまくというような贅沢なことは、滅多にしなかった。
おにぎりの味 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
進ぜる。お身ばかりでなく、一般の修行者にこれは出すことになっておる。当院の常例じゃ。そのこうの物の瓜は、宝蔵院漬というて、瓜の中に、紫蘇しそ唐辛子とうがらし
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが庭広からず然れども屋後おくごなほ数歩の菜圃さいほあまさしむ。款冬ふきせりたでねぎいちご薑荷しょうが独活うど、芋、百合、紫蘇しそ山椒さんしょ枸杞くこたぐい時に従つて皆厨房ちゅうぼうりょうとなすに足る。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
永山ながやま比布ぴつぷ蘭留らんると、眺望ながめは次第に淋しくなる。紫蘇しそともつかず、麻でも無いものを苅つて畑に乾してあるのを、車中の甲乙たれかれが評議して居たが、薄荷はつかだと丙が説明した。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
永山ながやま比布ぴっぷ蘭留らんると、眺望ながめは次第に淋しくなる。紫蘇しそともつかず、麻でも無いものを苅って畑にしてあるのを、車中の甲乙たれかれが評議して居たが、薄荷はっかだと丙が説明した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これは主に虫仲間からたのまれて、紫蘇しその実やけしの実をひろって来て花ばたけをこしらえたり、かたちのいい石やこけを集めて来て立派なお庭をつくったりする職業しょうばいでした。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
お豆腐の上に、まっ青な、かおりの高い紫蘇しその葉がきざんで乗せてあるのが私をよろこばせた。
そわそわと源聖寺げんしょうじ坂を降りて、西横堀川に架った末広橋を渡り、黒門市場を抜けて千日前へかけつけると、まず「千日堂」で二銭の紫蘇しそ入りの飴を買うてから常盤座へはいるのだった。
神経 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
冷奴ひややっこ紫蘇しその実、白瓜しろうりこうもので、わたくし取膳とりぜんの飯をあがると、帯をめ直して
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紫蘇しその實、唐辛たうがらしの實を少し雜ぜて之を作ると、朝々の好菜となる。次にはタチツボスミレの天ぷらである。粘液質で、齒當りが甚だ好い。太いタンポポの根もいろいろと使ひ道の有るものである。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
紫蘇しそたでのたぐひは黒き猫の子のひたひがほどのつちに植ゑたり
紫蘇しその葉のむらさきを、にらをまた踏みにじりつつ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
まねして紫蘇しそでも生やしましょうか。ではね。
梅干すや庭にしたゝる紫蘇しその汁 子規
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それをへば紫蘇しそあぢがして、チユー/\ふうちに、だん/\たけのこかはあかそまつてるのもうれしいものでした。このおひなむら髮結かみゆひむすめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お薬味にねぎの細かく切ったのと陳皮ちんぴと海苔の焼いて揉んだのと紅生姜べにしょうがの刻んだのと紫蘇しその実なんぞを添えて食べる時に味噌汁へ入れて掻廻かきまわしてもよし
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
歩行あるいたり、はて胡坐あぐらかいて能代のしろの膳の低いのを、毛脛けずね引挟ひっぱさむがごとくにして、紫蘇しその実に糖蝦あみ塩辛しおから、畳みいわしを小皿にならべて菜ッ葉の漬物うずたかく、白々と立つ粥の湯気の中に、真赤まっかな顔をして
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
塀外に茄子なすの花が紫に咲いて、赤紫蘇しそのほが長く出ていた。
紫蘇しその実をはさみの鈴の鳴りて摘む
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
毛のついた紫蘇しそまでが
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
それを酢醤油で食べますが薬味に生姜しょうがきざねぎ紫蘇しそなんぞを用いますと沢山食べられます。船で釣や網に参った時船中の即席料理に極くいいと申します。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
きのこ、豆、唐辛とうがらし紫蘇しそなぞが障子の外の縁にしてあるようなところだ。気の置けない家だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これを炊きたての熱い御飯へかけて薬味にはねぎ陳皮ちんぴ焼海苔やきのり紅生姜べにしょうがなぞの細かく刻んだものと紫蘇しその実なぞを入れよく掻き混ぜて食べますとどんなに美味しゅうございましょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それに比べると、ここにあるまぐろの刺身の新鮮なあかさはどうだ。そのさらに刺身のツマとして添えてあるのも、繊細をきわめたものばかりだ。細い緑色の海髪うご。小さな茎のままの紫蘇しその実。黄菊。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たたいわしの類、生の若胡瓜わかきゅうり玉葱たまねぎの刻んだものなんぞですがその外に紫蘇しそでも紅生姜べにしょうがでも何でも揃えられるだけの薬味を印度風いんどふうにすると二十四色、和蘭風おらんだふうにしても十八色添えて出します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
とうさんの幼少ちひさ時分じぶんいたり背負おぶつたりしてれたおひなは、ういふ山家やまがうまれたをんなでした。たけのこかはを三かくたゝんで、なか紫蘇しそけたのをれて、よくそれをとうさんにれたのもおひなでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
紫蘇飯しそめし 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第十四 紫蘇しそ飯」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)